第10章 他の奴らなんて知らない【万里】 甘裏
午後22時半、俺は鳴るスマホをみる。
"万里ー。ぎゅうして"
びっくりして口からジュースを吹き出す。
それを見ていた至さんが、万里それ汚っと冷ややかな目で見てくる。
いやいや、これは吹き出すっしょ。そう思いながら、スマホでLIMEの返信をする。
俺には年上の彼女がいる。いづみは、既に社会人で今は2年目くらいって言ってた。
そんな年上の彼女から来たLIMEに衝撃を受けた。いつもは甘えてくるような発言はなく、おはようとかおやすみとか、今日何してたのとか仕事や大学の話をするくらいだ。もちろんデートの予定だったりも決めるし、好きとかそういう風な恋人的な話題も言うことが多い。
確か、今日は会社の飲み会だって言ってた気がする。
何だか嫌な予感がする。
俺は至さんの部屋だということを忘れて、スマホを鳴らし、電話する。
プルルと鳴ってガチャとすぐに出る。
ザワザワとした背後の音ともに、聞きなれた声もする。しかし、いつもに比べたら抜けていてフワフワしたような甘い声が受話器から聞こえる。
「いづみさん?」
「あー。万里らー。ふふっ」
「楽しそうっすね」
「たのしーよー」
ダメだ。これ完全に酔っ払ってる。
そして、その後受話器から聞こえるのは男の声。何やら危ないよ、とかもっとこっちおいでとか聞こえてくる。
「今日、飲み会っすよね。俺、今から行くんで場所、教えてください」
騒がしい居酒屋の音よりも、そんなフワフワした恋人と見知らぬ男がいる方が何よりも気に食わねぇ。
「あざか丸って言う、ビロード駅前の居酒屋しゃんー」
ビロード駅前ならそんなに遠くない。
今から急いで行けば15分かからずいける。
「至さん、今から出掛けてきますわ」
「協力プレイどうするん?」
「それどころじゃ無くなりましたわ」
「仕方ないかー、そこまで送ってやっから」
「まさかLPが無くなったからとか言わないっすよね」