第9章 想ってる【万里】 甘夢
慌てて太一は否定する。確かに臣の言う通り、家に招き入れるということは自分のことを許してると解釈されてしまうこともあるし、部屋は密室であるし何をされても文句は言えない。
太一はスマホを何度かタップする。
「いづみはもっと万里に甘えてもいいのかもな」
「甘える?」
「さっきも太一が言ったように万里を頼るんだよ」
「我儘じゃない?」
「そういう我儘なら我儘じゃないっすよね、臣くん」
「ははっ、そうだな」
またたわいも無い話をして盛り上がると急にインターホンが鳴る。いづみは見てくるね、と2人に告げると席を立つ。
太一はそれを見計らい臣に耳打ちをする。
いづみは玄関を開けると息切れをした万里が立っていた。
「え、万里?」
「なんだよ」
「それ、こっちのセリフ。良くここが分かったね」
「太一から連絡貰ったんだよ」
「え」
「だって、彼氏より先に男を家に連れ込むなんて、流石の俺っちも万ちゃんに同情するっす」
「同情ってなんだよ。ありがとうな太一」
「さ、じゃあ万里も来たことだし俺たちも退散するか」
「そうっすね!いづみちゃん、甘えるっすよー!万ちゃんも監督さんに今日は帰らないかもって伝えておくっす!」
「今日万里実家帰んの?」
「なんでそうなる」
万里はため息を漏らす。
そして、臣と太一は順番にいづみの家を出て、代わりに万里が家へと入る。いづみは臣と太一が出る時にお礼を述べ、手を振った。
「万里も、外暑かったでしょ。せっかく来たんだからお茶、出すよ」
お邪魔しますと言い万里は靴を脱ぐ。
いづみの部屋はピンクと白にまとめられていて、何だかいい匂いがする。万里は少しソワソワし始めた。
「適当に座ってね。今用意するから」
そう言ってキッチンに消えて直ぐにコップとお茶を持ってくる。ゆっくりとテーブルの上にコップを置き、お茶を注ぐ。
一通り注ぎ終わりいづみがテーブルに全て置くとグイッと万里がいづみの手首を引っ張る。