第5章 だって、初めてだもの【綴】 甘夢、やや切なめ
そうするとポンッと俺のスマホが鳴る。
もちろんいづみからの返信であった。
その音を聞いてLIMEを綴に見せる。
綴は少しムッとした顔をしたが、お構い無しに綴に10分後に玄関なと伝えると俺は綴の背中を押して部屋を追い出す。
「(ま、いづみちゃん真面目だけど、不真面目だかんなー。あれで良く生徒会長やってるわ)」
身なりを適当に整えて、俺は玄関へ向かう。
すると、もう既に綴は待っていた。少し浮かばない表情をしていた。
もちろん、綴が行くことはいづみには伝えておらず、向こうに行ったら即2人きりにしようと思っていた。
そうして俺らは寮を後にして母校へと向かった。
母校に着くと既に校門の所にいづみが待っていた。そんな所で先生に見つかったらどうすんのかと思ったが、そんなことはなく無事に会うことが出来た。
「おーい、いづみちゃんー!急に呼び出してめんごー!」
「いえ!大丈夫です!丁度授業退屈だと思ってたので!!」
「授業はちゃんと受けろし」
「呼び出した三好先輩には言われたくはないですー!」
べぇっと舌を出して無邪気にいづみは笑っていた。俺の企みも知らないで。
「本当にパンケーキ連れてってくれるんですかー?」
「もちー♪男一成三好、嘘は付きません!」
「流石三好先輩ー♪」
「つづるんと行ってらっしゃい」
「「え」」
俺が綴は木の後ろに待ってろと言い隠れさせていたが、その一言で木から顔だけ出してくる。
そうするといづみもパニックになっていたが、綴もしどろもどろとしている。
「三好先輩、これはどういうことですか!嘘つきじゃないですか!!」
「俺と、とは言ってないっしょ」
「そうっすよ!急にそんなこと言われたって」
「ったく、二人とも俺っちの扱い酷すぎるっしょー。早く、二人でイチャイチャしてきなっ!それに、いづみちゃんは俺とじゃなくて、本当はつづるんと行きたいっしょ?」
こくんといづみは頷く。俺は綴の手を引っ張って来て、いづみと手を繋がせる。そして、俺は2人の背中を押す。
「さ。恋人同士で行ってらっしゃいー」
2人は何度か俺の方を向くがやがて顔を合わせ微笑んでいた。
俺ってば良い奴……さ。俺も帰るか。
俺は母校を後にして寮へと戻る。