第5章 だって、初めてだもの【綴】 甘夢、やや切なめ
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「……あの、さ。いづみ。ごめん」
「ううん。私の方こそごめん」
2人にされて気まづさが残る。
そして、微妙な空気感へと変わる。
ふといづみが口を開く。
「私、魅力ないんだと思った……綴くんぎゅうとかしてくれたりするけど、それ以上は絶対してくれないから……」
「ごめん……」
「妹のようにみられてるんだと思って……」
「ごめん……」
「……私魅力ない?」
やがていづみは立ち止まる。
ぷるぷると繋いでいた手が小刻みに震えてる。
いづみは手を自分の方に引っ込めようとするが、綴はその手を取った。
「か、可愛いよ。いづみは可愛い……俺には勿体無いくらい」
「……え」
「俺、いづみが初めての恋人で、一緒に居るだけでも嬉しくて、家の事もあるからあまりどこか連れてってあげたりできなかったけど。それに……それに、いづみを傷つけたら嫌だなって思って、これ以上のこと出来なかった……あの日も1人むしゃくしゃしてて……何か上手く言えなくてごめん」
「初めての……恋人なの?」
「そ、そうだよ……」
えへへといづみが笑う。
何だかそれだけで空気が軽くなる。
綴の表情も緩み、いつの間にか微笑んでいた。
「好きだよ、綴くん」
「俺もだよ。いづみ」
綴はいづみの手を引き胸に抱き寄せる。
そして、好きだよと続ける。
「目瞑って」
「目?」
いづみに目を瞑らせると唇をそっと重ねる。重ねた直後にいづみは目を開ける。
「瞑っててって言ったでしょ」
「だ、だって……その、えっと……されるなんて思って無かったから……/////」
いづみの顔は真っ赤になっていて口をパクパクとしていた。
そして2人で吹き出して笑った。
「後で三好先輩にお礼言わないと」
「俺から言っておくよ」
手を繋いでパンケーキ屋に向かった。
2020.7.20 執筆完了