第5章 だって、初めてだもの【綴】 甘夢、やや切なめ
「いやいや、だから普通の世間話だってー」
「そんなことないです……三好さんがそんな話をするはず……」
「それは酷すぎるっしょ」
「というか、そもそも、何でいづみと出掛けてるんすか」
俺だって最近忙しくて出掛けられないのに……とぶつくさ言っていた。と言うか、いづみも何故俺とお茶をした流れを言わなかったのが不思議だ。まぁ、顔立ちは少し幼く、目がくりくりとしていて見た目はしっかり者のようにみえるのに、かなりと言っても良いほど抜けているいづみのことだ。伝え忘れてそのままになっているんだろう。
「あー……それなー」
あなたの彼女に連れていかれた……しかもそれを綴には秘密にして欲しいって言われたものだから、綴には言わないで居た。
秘密って言われてたんだけどなぁ……何で会っちゃったこと言っちゃったのよいづみちゃん。
女の子の約束程信じられないものはない。
俺ははぐらかしとけばそのうち諦めて帰ると思ったが、そのはぐらかしは綴の怒りを爆発させるのに繋がってしまった。
「あー!もういい加減にしてくださいよ!いづみは俺の彼女なんすよ!」
「つ、つづるん落ち着いて……」
「これが落ち着いてられますか!今まで俺に隠し事一つしたことのないいづみが俺に黙って三好さんと会ってるなんて!!」
「だから、普通に世間話を……」
「あんたの普通は普通じゃないから!!」
「……はぁ」
「ため息ついてる場合じゃないっすよ!」
これはもう俺が説明するしかないよな……約束先に破ったのいづみちゃんだから良いよな。うん。
俺は綴と向き合い目を合わせる。
「あの日、俺はいづみちゃんに連行されたんだよ」
「はい?」
「いづみちゃんには黙っといてねって言われたんだけど、いづみちゃんがつづるんに言っちゃったなら良いよね」
綴は俺の目を見つめ返していた。
その目を見る限りやっぱりいづみは綴にちゃんと伝えてないのがよく分かった。もしかしたら綴がそれを聞かないまま解釈してしまったのかも知れないが。
「逆につづるんはいづみちゃんから何て言われたの」
「俺、その日むしゃくしゃしていづみと言い争いになって、三好さんに相談したから!と言われ、そのまま既読スルーっす」