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マイハート・ハード・ピンチ

第3章 合宿の朝


合宿三日目。
連日そこそこハードな練習が長時間つづいているので、翠は嵐と新名の様子が少し気がかりだった。
「身体を痛めてもよくないし、今日はちょっと軽めのメニューで、ミーティングの時間を多めに取ろう。公式試合だって近いし、対戦相手に合わせた作戦を考えなきゃね」
と、そんなことを考えながら廊下を歩いていたら、男子部屋前の洗面台で、嵐が顎に手を当て鏡を覗き込んでいる。寝起きなのか、後頭部に少し寝癖がついている。
「不二山くん、どうしたの?真剣な顔して」
翠が話しかけると、翠が歩いてくるのにも気づかず鏡をみつめていた嵐は驚き、とっさに顔の下半分を隠した。
「うわっ月島!!見るんじゃねえ!!」
嵐の驚きように、翠は頭上にハテナマークを浮かべた。
「?わかった。じゃあ、見ないから、となりで歯磨きしてもいい?」
翠は手にもっていたポーチから歯磨きセットを取り出した。
それをみた嵐もはっと思い出したかのように、
「わすれてた。俺も歯磨きしようと思ってたんだった」
と、ポケットに刺さっていた歯磨きセットを取り出し、歯磨き粉をつけてシャコシャコと歯を磨き始めた。
2人が無心で鏡に向き合っていると、背後の部屋のドアがそっと開き、恨めしそうな声が聞こえてきた。
「なに、仲良く2人で歯ぁ磨いてるんの?嵐さんずるくね??俺だって翠さんと…」
言い終わる前に、翠がニコッと微笑み、
「新名くん、おはよ!じゃあ新名くんも一緒に歯磨きしようよ!」と呼びかけ、扉を開けようと駆け寄った。
「うわー!!!翠さん、ストップ!ストップ!俺いまマジ寝癖やばいって!!絶対見せらんねぇーー!!」
慌てて新名がピシャリと扉を閉めてしまった。
「あらら」
翠は新名の焦り具合にキョトンとしている。嵐だって寝癖がついているし、そんなに気にするようなことかしら。
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