第11章 素敵はばたき恋の歌
夏休みも残り3日。
なんだかんだ今年も部活とバイトばかりで終わっていったなー、と、翠は自室の机で残りの課題にとりかかりつつ、頬杖をついて窓の外を見る。遊びに行ったと言えば、嵐と花火大会に行ったのと、おととい珊瑚と空中庭園のカフェでパフェを食べたくらいだろうか。あとはずっと柔道場か温水プールで過ごしていた。
最後にひとつ、なにか夏休み中にやり残したことがあるような気がして、翠は落ち着かない。
そんな彼女の携帯電話のメールの着信音が鳴る。翠はハッとする。これはあの人専用の着信音。翠お気に入りの女性歌手のラブソングである。
「嵐くん…?!」
いそいそとメールを確認すると、翠と新名に宛てたメールが届いていた。
『明日、3人でゲーセン行かね?』
メールの文面を見るなり、翠はギュッと胸が締め付けられるような気持ちになった。
明日も3人で会える。これこそが自分が感じていた「何かやり残したこと」に違いない。
でも、新名はいまどんな気持ちだろう…。
だが、コウちゃんに言われたように、もう自分の気持ちに嘘をつくのはやめるのだ。
翠はそそくさと、『いいね!行きたい!』と返信した。