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マイハート・ハード・ピンチ

第9章 ストロベリーフィールズの夢


翠は温水プールのバイトを終え、シャワーを浴びていた。
夏とはいえ、水に浸かったり忙しく動き回った後に浴びる暖かいシャワーは、とてもホッとする、気持ちの良いものだった。
しばらく目を瞑って暖かい湯を浴びていたが、不意に現実を思い出して翠は「はぁ…」とため息をついた。
一週間前の花火大会の日から、嵐と話していても、新名と話していても、よそよそしい態度になってしまう。
新名はあれから、何事もなかったかのようにケロリとした態度で接してくれているし、柔道部の活動も滞りなくできているようだ。
こんなに不安がっているのは自分だけなのではないか、と翠は思い直すけれども、あの日苦しそうに涙を浮かべていた新名の顔を思い出すと、やはり胸が締め付けられた。
これからも三人で仲良く、ずっと一緒にいたいと願う自分の気持ちが、ひどく傲慢に感じられる。

ロッカーを開け、タオルを取り出して体を拭き、いそいそと服を着て髪をドライヤーで乾かす。ウジウジと悩んでいたら、普段の退勤時間より30分もオーバーしている。翠は急ぎ気味に帰り支度を済ませた。帰りのバスがなくなってしまう。

小走りにプールの受付を通り過ぎ、入り口付近の自販機の前を通りかかった時、翠は見慣れた人影を見つけた。
「あれ?コウちゃん?」
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