第8章 演劇練習
『そもそもは、私の脚本が無様に失敗した、あの晩から始まっているんです。女性というものは、失敗をただの一度も許しはしない。私があなたの冷たい目つきにどれだけ心を引き裂かれたか、あなたに分かりますか!……あなたは、あの脚本が気に入らなくて、私を見限ったんでしょう』
聖司は、セリフを誦じて見せながら、あの花火大会の晩を思い出していた。彼は、自分のにえきらない覚悟から生じてしまったあの演奏が、珊瑚をひどく失望させてしまったのだと思っていた。だからこそ、トレープレフに自分を重ねずにいられない。彼は台詞を続ける。
『私は、脳みそに釘をぶちこまれたような気持ちです。私はあの脚本を、残らずみんな焼いてしまった。私は……私は……私はあなたを愛していたのに…』
聖司が言い終わらないうちに、気がつけば珊瑚は、ひどく傷ついたような顔で、はらはらと涙を流していた。それに気がついたカレンがふたりの間に飛び出して、進行を中断させた。
「ちょっとちょっと!!バンビ、どうしたの?大丈夫?少しあっちで休もう。みんな、30分休憩!」