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マイハート・ハード・ピンチ

第7章 花火大会にて


「嵐くん、お待たせ」
待ち合わせの駅には、すでに嵐の姿があり、翠は慌てて彼に駆け寄った。
「おう。…あれ?なんかいつもより表情が暗いな。なんかあったんか?」
はばたき駅で嵐と合流したものの、翠の心は新名のことでいっぱいだ。
しかし、先ほどの出来事を嵐に説明するわけにもいかない。
(今日はしっかり、笑顔でいなくちゃ。)
翠は心の中で気合を入れ直した。
「ううん。大丈夫だよ。…あ!縁日。今年はどの屋台に入ろっか?」
翠が屋台に駆け寄ると、嵐もすこしほっとした表情になった。
「そうだな、たこ焼き食いたくねぇ?あ、型抜きもいいかも」
そうして二人の後ろ姿は祭りの雑踏へと吸い込まれていった。

「今年の花火大会も盛況だね。去年より人が多いくらいかも」
屋台で食べ物を買い込んだ二人は、去年見つけた花火鑑賞スポットに早めに行ってスタンバイしていた。
「そうだな。まあ、賑やかな方が祭りらしくていいんじゃねえか」
嵐は焼きそばの容器の輪ゴムを外しながら、器用に口で割り箸を割っている。
「そうだねえ。…あっ」
翠が指差した先に、ドン、とひとつ、ひまわりのような大輪の花火が打ち上がった。
周囲の人々と、口々に綺麗ね、とかすごいね、などとはしゃいでいる。
翠と嵐も例年同様、「たまや〜」「かぎや〜」と盛り上がっている。が、やはり去年の翠とは様子がすこし違うように見える。楽しそうな笑みを浮かべているが、ふとした瞬間に、妙に心細そうな表情を浮かべるのを、嵐は見逃さなかった。
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