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マイハート・ハード・ピンチ

第1章 屋上ランチ


三人でわいわいとお昼を食べていると、屋上にアナウンスが鳴り響いた。紺野生徒会長の声だ。
「文化祭実行委員会からのお知らせです。学園演劇に参加する生徒は、このあと12時45分に視聴覚室に集まってください。台本を配布します。繰り返します、学園演劇に参加する生徒は…」

それを聞いた珊瑚が
「あーやば。わすれてた」と、慌ててお弁当を食べるペースを早める。
「え、珊瑚、文化祭の学園演劇でるの?二年生なのに?」
琉夏が不思議そうに言う。本来、学園演劇にははば学の三年生が出演することが多いのだ。
「うん。設楽先輩にヒロイン役で出ないかって言われた」
それを聞くなり琉夏はニンマリと、翠はにっこりと顔を見合わせた。
「やっぱりセイちゃんと仲良いよね」
琉夏が茶化すように言うと、珊瑚はすこし耳を赤くしながら、
「そ、そういうのじゃなくて。演劇ならカレンだって誘われてるし…そもそも、文化祭は吹奏楽部のステージもあるわけだから、めちゃくちゃ忙しくなっちゃって迷惑っていうか…」
と、まごまごしている。
「吹奏楽部のエースさまは大変ね」
翠はにっこりと微笑み、麦茶を珊瑚に差し出した。
珊瑚は恥ずかしまぎれにごくごくと喉を鳴らしてそれを飲んだ。
「そ、それより柔道部は今年はなにか催しをやったりしないの?」
珊瑚は苦し紛れに話題を変える。琉夏はニヤニヤしたままだ。
「そうねぇ…とくに不二山くんからは何も聞いてないけど…」

すると、屋上の扉がガチャリと開いた。そこには嵐の姿があった。
「月島ぁ!やっとみつけた!…あれ、桜井と日波も」
嵐はツカツカと早足で三人の座っているベンチに歩み寄ってきた。
「なんだ…もう、昼飯食ってたのかよ」
嵐の片手には緑色のバンダナに包まれたお弁当箱が握られている。
どうやら翠をお昼に誘うつもりだったらしい。ということに、珊瑚と琉夏は気がついたが、翠は能天気に「ルカちゃんが金欠だから、栄養補給してたの」なんて言っている。
嵐は不機嫌そうにルカの方を見る。琉夏の膝の上に広げられている弁当箱は彼にも十分見覚えがあった。
「俺だって栄養補給されてぇ…」
嵐がぼそりとつぶやいたが、ちゃんと聞き取ったのは珊瑚だけのようだ。
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