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マイハート・ハード・ピンチ

第1章 屋上ランチ


7月に入り、今年も潮風が心地いい季節になった。
ちょっと暑いけど、こんな日は屋上でお昼を食べるのがいいよね、なんて話し合いながら、琉夏と翠と珊瑚の三人はうきうきと階段を駆け上がった。
はば学の屋上は、有名セレブの別荘だって顔負けのオーシャンビュー。水平線に目を凝らすと、遠くにカラフルなヨットの帆がいくつかはためいているのがみえて、いよいよ夏本番という感じがする。

「よっしゃー!翠の手作り弁当。今日はこれを楽しみに午前中の授業がんばったんだ」
翠が取り出す弁当箱に、琉夏がはしゃぎ声をあげている。
「ルカちゃんは金欠になるとホットケーキばっかり食べちゃうからねえ」
翠が弁当を広げ、部活用の大きなポッドから冷たい麦茶を三人分そそいでいる。

「わたしだって、このまえ翠にご飯作ってもらったもんね」
そう言いながら、珊瑚はむくれた顔で母親手製の焼肉弁当を膝の上に広げている。
「またまたぁ。珊瑚も翠のお弁当食べたかったんでしょ。いじけちゃってさ〜」
ホレホレ、この綺麗な卵焼きを見よ!天才的だぁ〜。あ、こっちのハンバーグもイケる!と琉夏が珊瑚にお弁当を見せびらかす。
「こらこら。ルカちゃん、意地悪しないの。珊瑚も食べたいって言えば作ってきたのに」
「だって、翠はいつもお弁当自分で作って大変だから…数が増えたら、それだけ負担も増えちゃうじゃん」
翠の両親は二人とも朝が早く、自分の弁当作りだけでなく家の家事全般は彼女が担当している。
「いやいや、一人分も二人分も三人分も、どうせ作る分にはあんまり変わらないよ」

その一方で、母親が画家でしょっちゅう家にいる珊瑚は、お弁当なんて自分で作ったことはない。
「今日も珊瑚のお弁当は茶色いなあ」
琉夏が珊瑚のお弁当箱を覗き込む。
「いいの。わたしはお肉が好きだから、茶色いお弁当を毎日リクエストしてるの。それに、お母さんに好きなように作らせると、ヤバいキャラ弁になっちゃうから」
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