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【ヒプマイ】Bird in a cage

第8章 鳥が籠から飛び立つ日



私は左馬刻さんの前で下ろされる。鞄を渡されると、目が合う。泣きそうになって、ぐっと堪えると、理鶯さんも切なげに瞳を揺らしていた。


「理鶯さん。また、会えますよね」


なんとか言葉を絞り出して、問いかけると、理鶯さんは左馬刻さんの前で私を抱き寄せ、口付けをしてくれた。


「もちろんだ。また、会える」


「……ったく見てて恥ずかしいな」


左馬刻さんは悪態をついて車に乗り込む。


さよなら、と言って体を離そうとすると、理鶯さんは自分の首に掛かっている銀色のネックレスを外して、私の首にかけてくれた。


「これを、咲にやる。俺だと思って、大切にしてくれ」


我慢していたはずの涙が、ぽろぽろと涙がこぼれてくる。指で拭い、精一杯の笑顔で理鶯さんの顔を見た。


「ありがとう、理鶯さん。また、会いましょうね」


私は助手席に回って乗り込む。


「……もう、いいのか?」


左馬刻さんに問われ、私は黙って頷く。彼は運転席の窓を開けて、理鶯さんに向かって軽く手を挙げた。


「じゃあな、理鶯。また連絡するわ」

「ああ、左馬刻。ありがとう」


左馬刻さんの車が走り出す。バックミラーを見ると、理鶯さんはずっと動かないで、立っていた。見えなくなるまで、ずっと。
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