第7章 暗がりの中であなたと一緒に
理鶯さんは、暗闇を指差した。
「こんな生活だから、風呂場はないしいつも適当に済ませている。ただ、海軍の同僚から譲ってもらったキャンプ用の折りたたみ式のバスタブがあるのを思い出してな。おそらく2人くらいならギリギリ入るだろう。それでも良いか?」
「2人……ということは、理鶯さんも一緒に入るんでしょうか」
「そのつもりだったが、嫌か?」
私はふるふると首を横に振った。理鶯さんと一緒にお風呂なんて、嫌な訳がない。
「暗い分、星空もより綺麗に見えるぞ」
「それは楽しみです」
「では準備してくるから、咲も準備をして、終わったらたき火を見ながら休憩していてくれ」
その後、理鶯さんは1人、テントの裏の暗がりの中へと消えていった。私はささっと準備を済ませ、たき火の前の椅子に座る。遠くで物音がするのは、おそらく理鶯さんだろう。
でもそれ以外の音は、殆ど聞こえない。ゆらゆら燃える火を見ていると、不思議な気持ちになった。私が普段居る場所は、夢の中の偽物で、こっちが、現実なんじゃないか……と。
「そういえば、左馬刻さんが言ってた変なメシってなんだろう。普通にカレーだったけれどな」
昼間、理鶯さんが野原で黙り込んでしまったのも気になる。食材を調達しようにも場所が遠すぎるし、テントの中に銃のようなものもあったから、狩りでもしているのだろうか。
色々考えているうちに、理鶯さんが戻ってきた。