第7章 暗がりの中であなたと一緒に
たき火の前の置いてある折りたたみ式の椅子に腰掛けると、お皿にのったご飯とカレーを差し出された。私はスプーンでカレーをすくって、一口頬張る。
程よくスパイスがきいていて、たまねぎと牛肉の味がふわっと広がる。ごろごろとしたジャガイモと人参は程よく柔らかくなっていて、すごく美味しかった。
「美味しいです」
思わず頬が緩むと、理鶯さんは嬉しそうに目を細めた。
「そう言ってもらえると、嬉しい」
理鶯さんはあまり多くを語らない物静かな人だから、会話をしないと、パチパチという火の音以外、ほとんど何も聞こえない。時折風で葉がこすれる音や、虫の鳴き声が聞こえるくらいだ。
でも、その静かな雰囲気がとても心地良い。理鶯さんを包む空気は穏やかで、会話が無かったとしても、気まずくならない。
時折水で喉を潤しながら、私たちは静かにカレーを食べた。
「……あ」
ふと空を見上げると、綺麗な星空が広がっていることに気がつく。見たことのないきらめきに、私は感動して見入った。
「山の中だから、街の明かりに星空が邪魔されることもない。この景色は俺も好きだ」
「そうですね、毎日こんな風に空を仰げたら、本当にこの世界は広いんだなって実感できます」
星空を眺めながらカレーを食べ進め、空になったカレーの皿を調理場へと戻した。
「さて、少し早いが、寝る準備だけ済ませておこう。服は持ってるか?」
「はい。お泊まりセットを持ってきたので」
「それなら安心だな。歯磨きはそこですると良い。あと、風呂なんだが……」