第6章 野原と小川と
「確かにここに居れば、誰にも縛られないで自由に過ごせる。ただ、生活はそれなりに大変だ。まず、食材を一から調達しなければならない。例えばタラン……」
そこで理鶯さんの動きがピタリと止まってしまったので、私は首を傾げた。
「どうか、しました?」
「…………。いや、なんでもない。銃兎に口止めされているからそれ以上は言えない。忘れてくれ」
理鶯さんの長い沈黙が気になったけれど、言いたくなさそうだったのでそれ以上聞くのを止めた。左馬刻さんも「変なメシは食うな」と言っていたし、聞かない方が良いのかもしれない。
「せっかくだから、小川に入ってみても良いですか?」
「もちろん構わないが、足の傷は大丈夫か」
「そんなに傷まないので、少しだけ」
私はそっとつま先から小川に足をいれて、足首から下で小川のせせらぎを感じる。人工的ではない、自然のままの水の流れは、とても新鮮だった。
理鶯さんも靴を脱いで、迷彩服の裾を巻いて小川に入ってきた。