第6章 野原と小川と
「もう少しで野原と小川に出る。そこなら危険な生き物もいないから、裸足でも歩けるし、楽しめるだろう」
理鶯さんが言うとおり、少し進むと広い野原と、傍を小川が流れていた。ところどころには小さくて可憐な花が咲いている。
こんなに広い野原を見たのは、生まれてはじめてかもしれない。
そっと私の体を地面に下ろしてくれた理鶯さんは、私の顔を見て首を僅かに傾けた。
「どうだ?少しは気に入ってもらえただろうか」
「はい。すごく、素敵な場所です」
微笑むと、理鶯さんは満足げに口許を緩めた。
「良かった」
私はふと、走り出したい気持ちに駆られた。何もかもから解き放たれて、自由になってみたい。
私は理鶯さんの手を離れて、思いっきり野原を駆けてみた。思うがまま走って、くるくる回ってみたり、野に咲く花を見て、小川の傍で水の匂いを感じてみたり。寝転がって青空と雲を仰いだり。
理鶯さんはそんな私を、木陰に座りながら、静かに眺めていた。
こんな清々しい場所があるなんて、知らなかった。この広い森には、もっと別の何かがあるのかな。時間なんて気にしないで、理鶯さんと自由に探索できたら良いのに。