第5章 理鶯さんは欲情する
テントの中は想像以上に広く、生活に必要なものは概ね揃っているようだった。私は大人1人が寝るのにぎりぎりの簡易的なベッドの上に下ろされ、理鶯さんはすぐ傍のコンテナの中から十字マークがついた救急箱を取り出した。
「どこが擦れたんだ?」
私はヒールを脱いで、かかとの擦れた部分を見せる。
「ここです」
「ああ、ここか。でもこのままでは手当が出来ないな。ストッキングを脱いでくれ」
真面目な顔で見つめられると、かえって照れくさい。私は一度ベッドから立ち上がり、スカートの中に手を入れると、ストッキングを脱いだ。
「軽い擦り傷だから、簡単に消毒して絆創膏を貼っておこう」
手当をしてもらい、私が再びストッキングを履こうとすると、理鶯さんは手で制止した。
「待て。せっかく脱いだのだから、咲に触れたい」
ふくらはぎに手を添え、理鶯さんは私の足の甲に口付けをする。それだけで私の体はぞくりと震えた。
「でも、汗かいてて、あまり綺麗じゃないです」
私が首を横に振ると、理鶯さんも首を横に振った。
「そんなことはたいしたことじゃない。俺にとって大切なのは、お前に触れて、存在を感じることだ」
理鶯さんの唇は、つーっと足の甲からすね、スカートから覗く太ももまで伝ってのぼってくる。私は普段サービスする側だから、こんな風にされるのは慣れなくて、くすぐったい。
「綺麗だな、咲の脚は」
上目遣いで見つめられると、体の奥がきゅんと疼く。スカートをたくしあげられ、下着が露出すると、自分はソープ嬢じゃないんじゃないかと思う位、見られるのが恥ずかしくなって、思わず太ももを閉じで覆い隠してしまった。