第5章 理鶯さんは欲情する
「会いたかった」
左馬刻さんが居なくなると、いきなり理鶯さんに抱き寄せられた。筋肉質な腕に包み込まれると、守られているような気がして安心する。
「……私も、会いたかったです」
胸が一杯になって、その言葉を言うだけで精一杯だった。理鶯さんも何も言わず、私の髪を上から下へ何度か撫でながら、つむじにそっと口付けしてくれる。
「その靴で、ここまで来るのは大変だっただろう」
「てっきり左馬刻さんと外泊するものだと思っていたので、ヒールの高い靴を履いてきちゃって……靴擦れが出来てしまいました」
そう言うと理鶯さんは体を離し、いきなり私の膝と背中を抱きかかえて歩き出した。
「り、理鶯さん!?」
「傷口が悪化するといけない。テントの中で手当をしよう」
物を運ぶみたいに軽々と人の体を持ち上げて歩く理鶯さんは、下から眺めても見惚れるくらい整った顔立ちをしている。
「ありがとうございます」
微笑むと、理鶯さんも微笑み返してくれた。