第5章 理鶯さんは欲情する
「外泊……ですか」
営業が終わり、店長に事務所に呼び出されたかと思えば、意外なことを言われた。
――外泊。この店では、客と一緒に、一時的に店を出て、外で一泊するサービスをそう呼んでいる。
外泊は店の監視下から外れるため、キャストが逃亡したり、逆に危険な目に遭う可能性があり、裏オプションとしてごく一部の優良顧客にしか提供していない。
「それで、私を指名して下さっているのは、どなたなんですか?」
「それがな……左馬刻さんなんだよ」
意外すぎる名前に、私は驚きを隠せなかった。左馬刻さんが好む女性は、明らかに私のようなタイプじゃない。
店長も同じ考えのようで、顎をさすりながら首を傾げた。
「まあ、うちの店はサービス料を格安にする代わりに、火貂組に守ってもらってるところがあるから、左馬刻さんのお願いは断れない。くれぐれも失礼のないようにしてくれよ」
「……分かりました」
あの人はかなり攻撃的で激しいプレイを好むと聞いている。果たして私にその相手が務まるのか、不安を抱えながらその日が来るのを待った。