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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生




 泣いた涙を拭ってやらない
 そんな優しさもあるんだなと、ラビは知る。




 「すみれさん、アジア支部に残ったりしないですよね…」

 「は?!無いさ!絶対にないない!!」


 そんなことあってたまるか!!
 ラビは青ざめた顔で全力で否定をする。そんなラビを見て「何か言えって言ったのは君でしょう」とダグは面倒臭そうな顔をした。



 「だって、あんなすみれさん見たことない」

 「………そんなことねーさ?!」


 自惚れていた
 自分が一番だろうって


 (支部長はきっと、オレの知らないすみれを知っている)



 すみれと支部長を見ていれば嫌でも分かる。2人の信頼の厚さ、そしてすみれが支部長を心から慕っていることを。



 「…何さ、支部長の奴」



 普段は皆にイジられて、ぎゃーぎゃーと騒がしいくせに。よくフォーにからかわれているし、興奮するとすぐ蕁麻が疹出るし、極度のリナリーのファンですみれにもドン引きされていたのに。ここぞという時はあんな…



 「大人の余裕、っていうのかな」


 ダグがぽつりと呟いた。


 今の俺には持ち得ない、包容力、年の功、余裕。それは大人だからこそ手に入れられるものなのだろうか。それならば…



 「…早く大人になりてぇな」

 「…」

 「お前もそー思わねぇ?ダグ」

 「…」


 ダグに話しかけても返事がない。
 こんな至近距離で会話をしているのに聞こえないはずがない。ダグは身動きひとつせずすみれをじっと見つめていた。

 その視線は物事をただ眺めているだけではないとラビは気づく。
 何故なら自分もすみれに向ける、好意の視線と同じだったから…


 (…面白くねぇさ)




 「……童顔」

 「童っ…?!」

 「ちんちくりん」

 「調子者のフリした無関心ヤロウ」

 「へぇ、オレの事そう思ってたん?つか無視すんじゃねーさ!」

 「何で僕が君の独り言に返事をしなきゃいけないんだっ!」



 ラビとダグは言い合いから取っ組み合いになるも、身を潜めているため音を立てずにヒソヒソと掴み合う。
 ダグは顔を腕で擦りながら、今度ははっきりと告げる。


 「やっぱり君が嫌いだよ、ラビ!」

 「な"っ…?!」





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