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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生



 ―――――否。


 このまま消えてしまえたらいいのにと、何度願ったことだろう。

 しかし黒の教団に所属する時間が経てば経つほど、そのように考える頻度は減っていった。




 「一生懸命償おうとしているのはわかる。



 ―――しかし。
 死して償うのと、死んでも償うのは意味が違うぞ」



 「…そ、それは」



 どうゆう意味ですか?と言葉を発する前にバクが話す。



 「君が罪を犯したと思っているのならば、今はそれを罪と呼ぼう。
 君が…、すみれが。罪を犯したのなら、それは消えない」

 「っ」

 「しかし、君が黒の教団でやってきたことも、決して消えないんだ」

 「やって、きたこと?」

 「誰かのために、身を粉にして働いてきただろう?」



 (本当に自分のため?
 
 いや、違う。私は……)




 自分のために働いてきた

 此処、黒の教団に居たくて
 みんなの側にいたくて

 結局は自分のためだ




 「そんなこと」



 ありませんよ、と言い切る前に頭をポンポンと撫でられる。



 「本当か?」

 「!」

 「本当に、何もないのか?」

 「…っ、」



 頭を撫でられる手から、バクのあたたかさが伝う。
 すみれと目が合うとバクは柔らかく優しい笑みを浮かべた。眉尻を下げて笑うバクはやはり何処か寂し気で、すみれは目が離せなかった。



 「――――すみれ、

 君の幸せを、心から願っているぞ」



 「…ッ」



 ありがとう、と。
 言いたくて、言えない。

 だけど嬉しくて、気持ちがどうしようもなく込み上げてくる。



 「…っ、バク支部ちょ…!」



 震える唇で、かろうじて言えた言葉だった。泣いてることなんてきっとバレているだろう。しかし涙を見せたくないすみれは深く俯きお茶を飲むフリをした。

 バクは何も言わずに微笑んでいるだけだった。










 そんな2人をこっそり盗み見る影が、ふたつ。



 「……やっぱ、年上の魅力ってやつ?」

 「……」



 余裕ぶってそんなことをラビは言ってみるものの、否定をしてほしくて「なんか言えさ、ダグ」と彼の頭をコツンと軽く小突いた。




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