第18章 人の生
自分の身を呈してまで、フォーから僕を庇う義理なんてないでしょう?と。
ましてやファインダーの自分を庇う必要なんて、と。
千年伯爵やAKUMAとの聖戦に勝つために、エクソシストは貴重な存在だ。本来ならばファインダーのダグが身を呈してエクソシストであるラビを守らなければならない。
ラビは初めてダグと目が合う。
自身から目線を逸らさずじいっと見つめるその瞳は真摯で真っ直ぐなダグの生き方を表していた。
ダグの深い色の瞳に吸い込まれてしまいそうだ。そんな錯覚に陥った。
「そんなん…」
仲間なんだから当たり前だろ、と言いかけてラビは口を噤んだ。
「………そんなん、
同じ任務に就いた奴が…どんくさかったからさー!」
「な"っ…どんくさい?!」
ナカマ
なかま
仲間
コイツの前でそれは言ってはいけない。ラビは咄嗟にそう察した。
何故なら、オレは仲間ではない。ブックマンとして、傍観者としてこの場に居るだけだ。
「〜〜〜っ、それでも!
僕を庇ってくれて…」
「ほら!早くすみれんとこ行こーぜ」
ダグがお礼を言いかける前に「ちょうど飯時だし、すみれ誘ってみるさ♪」と話を遮る。
自分にはお礼を言われる価値などない。
ラビの胸の奥がちくりと僅かに痛む。痛みに気づかないフリをして、笑って誤魔化した。
「すみれさん、大丈夫かな」
「何が?」
「最近、元気なさそうだったから」
「…そーかぁ?」
「気づいてるくせに」
「ッ!、な、なにさ」
「君もそんな風に取り乱すんだね」
「う、うるせーさ!」
さっさと行くぞ!とラビはダグの背中をグイグイ押してダグを歩かせる。
「………君が嫌いだよ、ラビ」
「?、何か言ったか?」
「いや、何も」
ダグの小さな呟きはラビの耳に入ることはなかった。
僕は君が嫌いだよ
大嫌いだ
ガラスの目の君が。
すみれさんに好かれている、そんな君が。
彼女の笑顔を、僕は何年かけて得たことか。けれど君はそれを一瞬に、そして色鮮やかに。僕の知っている彼女を優に超えて引き出してしまうんだ。
―――君が羨ましい、なんて。
ダグは小さく小さく溜息を吐いた。
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