第18章 人の生
黒の教団アジア支部支部長、バク・チャン。
ドイツ系中国人で、西洋人に比べて低身長で童顔であるが整った顔立ちをしていた。
(ぜってーオレのほうがイケてる
オレの方が高身長だし?
顔立ちだって悪くねーし?)
バク・チャンは支部長まで登りつめた功績や頭脳の持ち主だが、ブックマン後継者であるラビだって負けてはいない、はず……はずだ。
「くっそ」
すみれが支部長を見つめる瞳を思い出す。すみれにあんな風に見つめられたり甘えられたりしたことなどあっただろうか。あったかもしれないが、それはいつのことだったか。考えれば考えるほど気分が沈んでいく。
黒の教団アジア支部の支部長まで登りつめた男だ。包容力とか、知識や経験とか、オレには理解できない大人の魅力とか、あるんだろうか……
(オレが年下だから頼りないのか?)
歳の差を悩んだところで意味がない。どうしたって解決方法などありはしないのだから。すみれとたった4つしか違わない歳の差でこんなに悩む方がどうかしている。
ラビはゴロンと仰向けに寝転がり高い天井を見上げた。
嗚呼、こんなにも遠い…………
「何だろうな…」
「何でしょうね…」
「は?」
「え?」
ラビとダグは顔を見合わす。
お互いなんとなく口にした独り言が見事に被る。もしかして、考えていることは同じなのでは………なんて。
「と、…とりあえず!
いつ仕事終わんのか聞きに行かねえ?
すみれんとこに」
いやいや、とりあえずって何さ?
自分で言っておきながら自分自身にツッコミを入れる。しかもすみれんとこにって!すみれのこと考えてましたってモロバレ……。ラビは苦虫を噛み潰したような顔をした。
「そうですね、行ってみましょう」
「へ?」
ラビはダグの返事に驚き呆ける。
ダグはそんなラビに目もくれず、フォーに痛めつけられた身体を擦りながらゆっくりと起き上がり歩き出した。ラビは慌ててダグへと続く。
「初めて意見が合ったな」
「不本意ながらですけどね。
……どうして」
「ん?」
「どうして、僕を庇ったんですか」