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49番目のあなた【D.Gray-man】

第18章  人の生



 鎌は槍の柄を切り裂き、ラビの右肩から左胸にかけて大きくザックリと肉を断つ………


 「…、…ッゲホ」

 「ラ…ッ、ラビーーーー!!!!」


 ラビは声を失い、崩れ落ちるよう跪く。ラビがこれ以上倒れぬようダグは彼の両肩を支えた。ダグは目にいっぱいの涙をためた。


 「…っへ、オレもここまで………」


 「ここまでか」と、そう言いかけた時。ラビはとある違和感に気づく。


 「ん?」

 「?、…ラビ…ッ?」


 涙をボロボロと流すダグを他所に、ラビは自身の肩や胸をペタペタと触る。どこも傷一つ、いや汚れ一つ付いてはいなかった。





 「ふぁ〜あ!

 眠くて実体化できなくなってきた」




 「「…は?!」」

 「半日はやってたし、少し休もうぜ」


 呆然とする二人に見向きもせず、天井まで届く巨大な扉へと吸い込まれるようにフォーは消えていった。「ふあぁぁぁ〜〜〜〜」と彼女の大きな欠伸の余韻だけが残った。


 「「……」」

 「…フォーが眠くなかったら、オレ、死んでたってコト…?」

 「…そう、考えたくは、ないですが…」

 「「……」」


 ラビとダグは無言で互いの顔を見合わす。どうやら思うことは同じようだ。


 「ふへ〜〜〜〜っ」

 「はあ〜〜〜〜っ」


 二人で大きな溜息を吐き出し、広間で倒れ込む。嗚呼、やっと拷問のような稽古から開放された。そもそも任務遂行のためにアジア支部まで来ているのに、いつまでこんなことをしなければならないのか……


 「……早く、終わんねーかな」

 「…何がですか」

 「んー、任務?」

 「なんで疑問形……」

 「早く終わって欲しーじゃん」

 「すみれさん…科学班、次第でしょうね」


 “すみれ”という言葉に、ラビは不自然に身体がピクリと反応する。


 「あーあ、ホント早く終わんねーかな」


 ラビは最後に見たすみれの姿を思い出していた。



* * *


 アジア支部に到着し、本部とは異なる建築物や雰囲気を堪能する間もなく声に遮られる。


「ようこそ、アジア支部へ」


 声がする方へ、ラビ達は振り返った。
その声に誰よりも反応したのが―――――、


 「バ……バク支部長っ!!」


 すみれであり、一目見るやいなやバグに抱きついた。

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