第18章 人の生
「〜〜――カハッ」
フォーはラビの懐に潜り込み腹にめがけて重い蹴りを入れる。ラビは蹴飛ばされた勢いで壁まで吹き飛ばされてしまった。陳列された武器が並ぶ壁に激突し、それらと共に崩れ落ちる。
「…あたしがすみれを、そんな風に思ってる訳あるか」
見え透いた挑発に乗ってんじゃねーよバァカ。フォーが小さく呟いた。その呟きはガシャンガラランと武器が立てる煩い落下音に掻き消された。
「……痛っつー」
「動きが単調すぎる」
フォーの瞳孔は開き、先程よりも戦闘態勢を取るその姿はピリッとした鋭い空気を作り出す。それはまるで殺意に近いものを感じた。
「ブックマンjrってのはこんなもんか?」
「…んなワケ、ねーだろッ!」
ラビは手元に転がっている武器の中から槍を手にし、フォーに向かって棒術を繰り広げる。
「本気で出してきな小僧」
「そんじゃお得意分野でいかせてもらうさ」
「始めっからそうしろってんだクソガキ!」
「へっ、オールラウンダーなもんで」
今までの雰囲気とは打って変わり、殺伐さが冷たい空気を生み出す。訓練とは思えぬ、本気の刃の交差に瞬きひとつできやしない。
「つーか……
なんっっっでアジア支部まで来て鍛錬せにゃならんのさ?!」
ならんのさーならんのさーさーさーさー…と、ラビの叫び声が此処、扉の間に響き渡り木霊した。
「ブックマンにそう頼まれたからなァ。弛んでるから気ィ締めてやれって。
あたしは強いぜ、ブックマンjr?」
「ぐっ?!」
ラビは再び蹴飛ばされ壁に激突し、そのままズルズルと倒れ込んだ。
「…畜生ッ」
手合わせでもすれば気持ちが晴れるかと思いきや、思考を邪魔するモヤは募るばかりだ。
「ダグ!いつまでものんびてんじゃねーさ!」
「う、うぅーん…」
「おいおい!敵は待ってくんねーぞ!!」
どうしたら彼女に敵うか考えようとしたその刹那、丸腰になってしまったダグにフォーが襲いかかる。
「わッ?!」
「クッ…、フォー!!あんたの相手はオレだろ!?」
ラビは動けないダグを庇うため、両腕を鎌に変化させたフォーの前に飛び出した。槍を構え、彼女から繰り出される衝撃に耐える体制を取る。
しかし、フォーの攻撃は容赦なかった。