第18章 人の生
「……ジジ、悪いが早急にアジア支部へ赴いて欲しい」
「おう、全く問題ねーよ」
「…っ」
ジジはなんでもないように振る舞うも、余命宣告を告げられたような重苦しい空気に室長室はつつまれた。
「んで!オレが呼ばれた理由は?」
「「「!?」」」
向日葵のような明るい声が暗い空気を打ち壊す。声がした方を振り向くと、室長室の扉にラビがもたれ掛かっていた。
「ラビ…!」
(((?!、あれいつの間に居るんだろ…!)))
「ラビ、いつから聞いてたんだい?」
「んーほぼ最初から?
ジジがアジア支部に移動ってトコから」
あっけからんとしたラビの登場に、場の空気が軽くなったのを誰もが感じた。
(……ラビってやっぱ凄い。明るくて…眩しい)
すみれはラビからそっと視線を外す。
今はまだそんなラビを直視することが辛い。
(ジジがアジア支部……遠いなあ)
そう簡単に会いに行ける距離ではない。
だから1、2週間かけて仕事の引き継ぎをして。科学班やリナリー達みんなで送別会をして送り出すのかな。嫌だな、ジジともっと一緒に仕事したかったな…っ
すみれは俯き唇をきゅっと噛み締めた。
「聞いてたのなら話は早い。
ラビを呼んだのはジジとすみれちゃんと共にアジア支部へ行ってほしいからだ」
「「は?」」
ラビとすみれの声が重なる。
二人は顔を見合わすも、なんとも言えない気まずい雰囲気が漂う。
「アジア支部にイノセンスが保護されているんだ。ラビはそのイノセンスの回収に行って欲しい」
「…了解さー」
「コ、コムイさん待って!何で私も同行するの…?!」
「すみれちゃんがジジの仕事引継して!とにかく時間がないんだよね」
コムイは眼鏡をクイッと掛け直し、捲し立てるように説明を始めた。
「何せ上層部や中央庁を怒らせちゃったからね!早くジジを左遷させたいらしいんだ!仕事の引き継ぎもあるからなるべく時間が欲しいと頼んだものの上層部は全く聞く耳を持たなくてね!本部だって常に人不足だけどアジア支部も人手が足りないらしく早くジジに来てもらいたいみたいなんだ!と、言うわけで…
……久しぶりに、アジア支部に顔を出しておいで。
バクちゃんもきっと喜ぶよ」
「…えっ?」