第17章 想い思われ反発して
自分を貧しめる過小評価は、自分をリスペクトしてくれる相手も一緒に下げてしまうことになる。
例え、簡単に評価したくなくて自分にはもったいないという意味だったとしても。
すみれが幸せである事が、困難に立ち向かう時の原動力であって欲しい。
オレや周囲の切なる願いであることに、何で気づかない?何で蔑ろにする?
何で、そんな些細な想いが叶わないんだ。
(―――――……好きだッ)
すみれが好きだ。
楽しそうに笑うすみれが。
…いや、怒り顔も泣き顔も、全部好きだ。
今更すみれを好きな理由なんてない。
明確な理由があるなら、むしろその方が良かった。嫌いになる方法や諦める口実ができたかもしれないから。
全部が好きだ。どうしようもなく好きだ。
だから幸せになってほしい、のに。
破滅の道へ自ら進むすみれを許せない。
「いつまで、そーやって悲劇のヒロインぶる?」
「え…?」
「辛い奴が偉いんじゃない。
すみれがそんな風になる必要は無いだろ」
いい加減気づいてほしい。
「…人の厚意ぐらい、素直に受け取っていいんじゃねーの」
幸せを感じることを、幸せになることを。
どうか拒まないで。
もう十分すぎるくらい頑張っているではないか。
「…私、だって……」
「すみれ?」
深く俯くすみれの顔を覗き込む。
どうか“幸せになりたい”と、言ってくれることを願って……
「どうしたら、いいのか
わらかないんだ…………ッッ!!!」
悲痛な叫びをあげるように。
しかし、その苦しそうな声はやっと絞り出した最大限の声量で。
今にも泣き出してしまいそうなくらい切羽詰まっていて、幸せとは程遠い表情のすみれにオレは目を見開いた。
「何がわかるって言うのッ…?!」
「すみれッ」
「ラビに関係ないでしょ…ッ?!」
「 ―――ッ」
“関 係 な い”
その言葉はナイフのように心の臓まで突き刺さる。
すみれの、その鋭い一言でオレの世界は暗転してしまった。
ドクドクと嫌な胸の高鳴りが身体中に警報を鳴らす。
「ラビなんか…っ!」
(…やめろ)
嫌な胸騒ぎがする。