第17章 想い思われ反発して
何故、自分の好きな人―――すみれが幸せに暮らしてほしいという、たったそれだけの願いが叶わないのか。
何故、自ら不幸になろうとするのか。
「…すみれは何も見えてねーさ」
見えてないどころか聞く耳すら持たないし、覚えてすらいないのか。
オレの気持ちが届いてないことを思い知らされ、愕然とした。
*
先日。
すみれとリナリーとオレの3人で街へ外出し、広場ですみれと社交ダンスをした時のこと。
『―――幸せに、なっていいんさ』
『え?』
『すみれは幸せになっていいんさ』
『ど…、どうして?』
『だってすみれが幸せそうだと、リナリーも科学班の奴らも幸せそうさ!
だから、その逆も然り。
…すみれが辛そうだと、みんなも辛そうさ。
だから、皆のために幸せになるんさ』
*
「覚えておいて」と、約束した。
あん時のすみれは満更でもなさそうだった、のに。
「…見えてない、って?」
そんなこともわからないのか。
いや、分かっているならこんな話になるハズがない。
「自分自身を痛めつけんのは。ちょっと違うんじゃねーの?」
「わ、私が言いたいのは、そうじゃなくて…!」
「いーや、一緒だろ」
ああ、止められナイ。
「自分を不幸にして、周りに気を使わすのは違うんじゃねーの?」
「私はっ、周りに気を使わせてなんて…!」
「まだわかんねーの?今、目の前に。
すみれのことを思って心配してる奴がいんのに。
それに、そう思ってんのはオレだけじゃ無ぇ」
そう、オレだけじゃない。
ジョニーもタップもリーバー班長も、科学班の奴ら全員そうだ。それにリナリーに、あのユウですら気にかけている。
みんな口にしないだけですみれを心配している。
「ッ、私なんかが…何をしたって、誰も「言うな」
“誰も心配しない”ってか?
みんなが、すみれの仲間達が、こんなにも想っている。
どうして本人に伝わらないんだ。どうして…ッ
「私なんかって言うな。自分を下げるな。
“そんなことない”って、他人に言わせる前ぶりさ?」
「そ、そんなんじゃ…!」
何でだろう、オレ。
すっげぇ上手に笑えている気がする。