第17章 想い思われ反発して
酔っ払っていたけど、確かにそう言っていた。
それをオレに…?
という事は、すみれの好きな人って……
オ レ ?
そう自覚したら、もう。
ブックマンの掟とか、不毛な想いだとか。
一生懸命に自分に言い聞かせていたイロイロな言い訳が全てぶっ飛んだ。
「えぇッ、マジで?!!
やったーーーーーー!!!!」
「え、あ、うん、どうぞ」
只々、嬉しくて。
だって、そういうことだろ?!
いつか好きなヤツと使うつもりの物を、オレにくれるということは。
頭を冷やすために降雪の夜風に当たってきたのに、首から上が特に熱い。熱いのにすみれからマグカップを受け取ろうとする手は凍えているかのようにフルフルと震えそうだ。
高鳴る胸の鼓動を悟られないよう、なんてことないようにパッとマグカップを手にした。
「めっさ嬉しー!!サンキュー♪」
ホント、なんてことないお揃いのマグカップだ。そんな高値にも見えない、普段使い用のマグカップ。だけど嬉しさを抑えられない。
だってそれは、すみれの好きなヤツに贈られる物だから。それが本人から贈られ、俺の手に渡るということは、そういうことだろう。
拗れ拗らせた想いが、今…………
「コレ、ホントに貰っていいんさ?!」
夢じゃないよな?
オレの勘違いじゃないよな?
「うん、いいよ」
「…大切に、使うさ」
あぁ、もう
「マジ嬉しー…」
嬉しすぎてどうにかなってしまうのではないか。
「すみれ、オレっ………!!」
好きだ
好きなんだ
意を決し、伝えようとしたその時。
「………私には必要ないし、ね!」
「―――――は?」
(必要、ない?)
今、なんっつった?
一瞬にして目の前が真っ暗になる。
オレの背後にガラス板なんて存在しないが、ピシッと亀裂が入りガラガラガラーーッと破砕音を立てて崩れ落ちていく。そんな気がした。
「私がコレを、誰かと使う日がくるなんて、さ」
「は?!いや、オレはてっきり……」
オレはてっきり?
何を期待した?
そりゃ誰だって期待するだろ…!!
――――ブックマン後継者のくせに?
世界の枠組みから外れて生きているオレが、思い上がりも甚だしい事に気づく。