第17章 想い思われ反発して
「お!
ペアのマグカップじゃんー!」
すみれと対面になるよう、ピョコッとテーブルから顔を出す。
小さな喜びを噛み締めるために、オレはいつも通りの“ラビ”を演じる。
「そうなの、ビンゴ大会で当たっ………、ら」
「ら?」
「ラララらラララ!!!………ラビ?!!」
「おう!お疲れサン〜」
にしても“ラ”多くね?笑と、オレはテーブルの上をピョンッと跨ぎすみれの隣に腰掛ける。
「治ったんだな」
「え?」
「猫語」
「え、あ、あぁ!そ、そうなの!あのあとすぐ…っ!」
見ていて飽きない。
コロコロ変わるすみれの表情を、ずっと隣で見ていたい。
(ずっと一緒にいられたら、どんなに…)
そう考えて、辞めた
不毛すぎる
「…悪かったさ」
「え?!」
「ちゃんと、手伝ってやれなくて」
総務課のオネーサンの所に逃げた事。
すみれの傍に居たいと願いつつ、いざという時に踏み出せなくなる事。
本人には伝えられないが、それ以外にもたくさんの意味を込めて謝った。
「っ!、ううん、そんな…!
むしろ私の方こそ、迷惑かけてたしっ
…手伝ってくれて、ありがとうっ!」
「うんにゃ。オレがそうしたかっただけさ〜」
何でもないように、いつも通りにニッと笑ってみせる。
この想いが少しでも伝わっただろうか。いや、伝わってはいけないのだが。
笑顔の仮面の下で対な思いがぐるぐると巡り続ける。
「でも、ちょっと残念さー」
「?、なにが?」
「猫語、面白かったのに♪」
「もうっ!他人事だと思って」
「嘘、可愛かったのに」
「か、可愛くなんて…!」
「それに、今もまだ猫語だったら!
もっとすみれと一緒に居れたろー?」
すみれの手伝いしたかったさ、とニンマリとお調子者の“ラビ”の発言にほんの少し本音を混ぜる。
伝われ、伝わるな、伝われ……伝わって
(―――あぁ、好きだ)
「…っあ、コレ!ラビにあげるっ」
「ん?」
すみれがオレに差し出してきたのは、クリスマスパーティーの景品で当てたペアのマグカップ、だった。
(え、それって……?!)
すみれの言葉を思い出す。
『これはぁ!いつか好きな人と〜使うんですぅー!』