第17章 想い思われ反発して
猫語になるとかマジでビックリしたし、科学班の奴らの「時間が経てば治るだろ」と楽観的な発言には耳を疑った、けど。
すみれの言葉を理解出来たのはオレだけという優越感に浸れたことと、非日常的な彼女と一緒に居られたことには感謝してる。
ふと、猫語で言われたことを思い出してしまった。
『に、にゃあっ! (神田に、お願いするっ!)』
『本人が、テメェはお呼びじゃねーだとよ』
あの時のすみれはユウの腕を離さまいとしがみつき、必死に何かを訴えていた。
「…………ユウには、素直に頼むんだな」
今になって己の中で黒い感情が巻き上がる。
「―――オレだけ、か」
想っているのは自分だけ。
黒の教団…科学班のために身を粉にして働くすみれを見ていればそんなことは解りきっていた事だ。
たまに「おっ、オレ達ってイイ感じ?」と思うことはあるもののセーブしてしまう自分がいる(そして総務課のオネーサンに気を逸らす)事は棚に上げさせてもらおう。
オレには素直に頼ってくれないのに、ユウには頼るんだな。あんな一生懸命に。
「…オレばっか必死になって、バカみてぇ」
すみれの肩の荷が少しでも下りればと、ブックマンの仕事の合間に本を探してみたりして。
彼女の猫語騒動ですっかり渡しそびれた文庫本サイズのソレは、臀部のポケットに突っ込んだままだった。
「こんなもん…ッ」
本を投げ捨てようと腕を振り上げ
――――――――辞めた。
「…捨てちまえたら、いいに」
すみれへの、想いなんて
「ブックマンに、心は要らねぇんさ」
「ん…、ラビ……」
「―――ッ!!」
「……すぅー……」
「!、寝言かよっ…………はぁーーーッ」
心のコントロールが上手くいかない。
寝ているすみれの傍に居たら、余計に悪い思考回路に陥りかねない。いや、もう既に陥っている。
まだ傍に居たい気持ちを振り払い(このまま居座り続けたらすみれに手を出しかねねーし)、後ろ髪を引かれる思いでオレは仮眠室を後にした。
「寒…ッ」
マイナスな思考と気持ちをスッキリさせるために暗く寒い野外へ飛び出した。
夜空を見上げるも、どんより雲に覆われているため星1つ見えなかった。
「伸!」
――――早く、