第17章 想い思われ反発して
“お前、すみれをどーしたいんだよ”
ユウの言葉が再び脳内で再生される。
「………オレは、ただ…」
すみれの傍に居たかっただけ。
コロコロと移りゆく表情を。仲間と楽しそうに過ごす幸せなすみれを、見守りたかっただけ。
「そんだけ、さ」
――――否、本当に?
「ん……うぅん…」
「すみれ?」
「……zzz」
「…なかなか起きねーな」
仮眠室のベッドは硬くて寝難そうだがすみれは心地良さそうに寝息をスースーと立てている。
「こんなベッドで寝れるなんて、どんだけ疲れてんさー」
俺はすみれの顔を近距離でみつめる。相変わらず目の隈が酷い。
今はこの部屋にすみれとオレの二人だけで、他に誰もいない。
「…いつぶりさね、すみれとふたりでいるなんて」
すみれが貴族令嬢だった頃はいつも二人きりだったが、黒の教団に来てからは必ずと言っていいほど自分達以外にも人がいる。
“二人きり”
意識すればするほど胸がどんどん高鳴る。
何だろう、この胸の奥がくすぐったい感じは。
すみれの幸せを見守りたい
それだけで。
そう、それだけでいい―――――
「――――んな、訳ねぇだろッ!」
すみれの幸せを見守りたい、その気持ちに嘘は微塵もない。
「だってオレは…!」
すみれのことが、ずっと前から―――!
こちとら思春期真っ盛りの男子だぞ?!
好きな奴――すみれと一緒にいたいとか、触れたいとか……あわよくばイヤらしいことシたいとか。
しょーもねえことばっか考える
でも仕方ねぇだろ
「―――――…好きだ」
どうしようもなく恋焦がれる。
この無駄な自問自答も何度目だろうか。
オレの悩みなんて微塵も知らないすみれは呑気なもんで、あんな盛大に酔い潰れた。
普段から抜けてるとこはあるものの、割と隙がないくせに。何で今日に限って人が沢山居るとこで酔いつぶれるんさ?!
可愛いすみれを見てみぬふりなんて絶対ェ無理。
猫語になった時だってそうだ。
「……可愛いかった、さ」
すみれが寝ているベッドにもたれ掛かり、オレは観念するかのように項垂れた。