第14章 距離
「隠してないさ、これっぽっちも。
じゃあ、今度そーゆー話になったら言うからな!
ドレス着て、センス持って『無礼者!』とか言ってたって♪」
「………ねえ、それは一体誰のこと?」
「え、すみれ?」
「いやいや、言ったことないし!?」
二人でふざけて笑い合う。
やっと昔の二人に戻れた気がした。
「あの頃と変わったな」
「え?」
「よく笑うようになったし。
つーか、すみれって結構酒飲めたんだな 笑」
前は全然飲んでなかったのにと、ラビはお酒をひとくち口にする。
“よく笑うようになったし”
気のせいだろうか
一瞬、ほんの一瞬。
すみれはこの台詞から、寂しさを垣間見た気がした。
「えぇ?前から飲めるよ!
飲むと会話もダンスも鈍っちゃうから、飲まないようにしてただけ」
「まぁ、こんな気兼ねない居場所はなかったもんなー」
「…ラビこそ、変わったね!少年から青少年って感じ?」
「そりゃ成長期だかんな!まだまだ大人になるぜ?」
当時も大人っぽかったけどー!とすみれは楽しそうに話すものの、少し目線を下に落す。
「それに、神田やリナリー達と居る時の、あんな風にはしゃぐラビの姿は………あんまり見せてくれなかったような気がする。
やっぱり、ラビだって変わったよ」
どことなく垣間見えた寂しさは、気の所為ではなかったようだ。
お互いの変化に、お互いに寂しさを感じていたなんて。
「…すみれの前では大人ぶってたから、俺」
「うそだぁ」
「悔しいけど、ホント!
ガキだったから、ちょっとでも大人に見せたかったんさ。
…でも、変わってないモノもある」
「?、なに?」
「これ」
そう言って、ラビは自身の首に巻き付けているモノに優しく触れる。
「すみれがくれたマフラー。
ずっと使ってた。使い勝手が良いだけじゃなくて……大事にしてた」
「ラビ…」
「もうすみれと会えないと思ってたから、こんなボロボロになっても手放せなかったんさ。
ーーーだから、また会えて嬉しかった」
「わ、私もだよっ!また会えて、本当に嬉しいよ…っ」
「ごめんな」
「え?」
「あんな別れ方になっちまって。
……ほんと、生きててくれてよかった」