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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離



「ラビ…」

やはり私が感じた通り避けられていたし、ラビは私に腹を立てていた。

ーーーーだけど、




「そんな風に、思ってくれていたの…?」

私の幸せを、願ってくれていたなんて。

「当たり前だろ?」

「…っ、」



ありがとう

喉の奥が支えて、言葉が出なかった。
お礼の言葉の代わりに、すみれの瞳からポロリと一滴の涙が溢れた。


「泣くなよ、俺が泣かしてるみてぇさ」

「うん…っ」


そう言いながらラビはすみれの涙を指で拭う。


「……ラビは、“こんなトコじゃない何処か”って言ってくれたけど、こんなトコじゃないよ。


みんな良い人ばかりで…私、罪を償うとか言ったけど。黒の教団の皆といるの、楽しいの。駄目だよね」

「そんなことねぇさ。
…むしろ。すみれがそう言える場所があって、安心したさ」


(ーーーただ、聖戦に関係のないトコであって欲しかった)

この台詞は口にする事なく、ラビは胸の中に留めた。


「…そうゆうすみれこそ、怒ってんじゃねえの?」

「、何を?」

「聞いたろ、ブックマンのこと。
俺。あの頃は自分の事、何も言わなかったから」


(“あの頃”……)

きっと、ディックと呼んでいた頃の事だろう。


「…怒ってないよ。私、何も聞かなかったじゃない」

(正しくは聞けなかっただけ、だけど。でも、私が触れなかった事だ)


「ラビは嘘をついた訳でもないのに。人に言えないことぐらい、みんなあるでしょう?」

「すみれ……ありがとな」


すみれが微笑むのを見て、ラビはほっとしたようだった。




「そう言えばさ!すみれが貴族令嬢出身のコトは、科学班の奴らは知ってんの?」

「知らないよ」

ラビは驚いて、特徴的なタレ目がまんまるに開かれる。

「隠してんの?」

「そんなつもりもないよ、言う機会もなかっただけ。

そうゆう、ラビはどうなの?
私と、その…し、知り合いだったこと、隠してる?」


自分で発したものの、あえて“知り合い”という言葉にズキンと胸が痛む。
すみれは上げていた顔を俯き、両手でぎゅっと水の入ったコップを握った。











「隠してない」


ラビのたったその一言で、びっくりしてしまうほど一瞬ですみれの心の靄が消えた。
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