• テキストサイズ

49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離




「なんで、ディ…前の呼び方じゃ、だめなの?」

すみれは下を向いたまま、恐る恐るラビに問う。



どのような返事が来るのだろう。

以前のことを知られているのは、都合が悪いから?
ただ端に呼ばれたくないだけ?

こんな事を聞く鬱陶しい私は、今度こそ完全に拒絶されてしまうかなあーーーーー

すみれはギュッと目を瞑り、ラビから放たれる言葉に身構える。






「ブックマンの仕事上、前の呼び名は使えないんさ!」

「…え?」

「へ?」

ラビまで素っ頓狂な声を出す。
あ、あれ?



「そ、そうなの?」

私、拒絶されたわけではない…?

「え、俺この前も言ったじゃん!それにすみれも『わかった』って返事しただろ?」

「ええ?!うそ?!」

「うそって、オイ…」

ラビは頭を抱え「それ俺の台詞ぅー!」と叫んだ。


そ、そのくだり、聞いてなかった…!!

多分、私の頭の中で「ラビと呼ぶ」とは「ディックと呼ぶな」に変換され、“拒絶された事”になってしまったんだろう。勝手に自己変換して不要なショックうけて、その後の会話は頭に入っていかなかったんだ。

だってそう言われたあと、何か会話をして生返事をしたことだけは覚えている…!


「ご…、ごめんっ!!!」

「いや、もういいさ……だからさ、呼んで?」

「え?」

「俺の名前」

「…………ラ、……」

「ラ?」

「……ラビ、」

「おう、ヨシ!」

「わっ?!」


ラビはすみれの頭をわしゃわしゃっと撫でる。
かと思えばすみれの手を引き、食堂の隅っこへ誘導し座らせた。テーブルに置いてある水がたっぷり入ったコップを取り、「酒、飲みすぎさ」とすみれに差し出した。


「あ、ありがとう」

「ん」

すみれがおずおずと受け取るのを見届け、そして当たり前のようにすみれの隣に腰を下ろす。


少し優しくされただけで、以前の心地良い関係を思い出す。それだけなのに嬉しくて、涙腺が緩みそうになってしまった。


「俺さ」

「…う、うん」

「確かに、すみれに怒ってたし。正直、避けてた」

「………うん」



「すみれがキライとか、そんなんじゃなくて……

こんなとこじゃない何処かで、幸せに暮らしていてほしかったんさ。


ただ、そんだけ」


/ 355ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp