第14章 距離
「では、ブックマンとラビの入団を祝い…」
「「「「カンパーーイ!!」」」」
コムイの音頭で歓迎会が始まった
「無事に開催できて良かったねぇ!」
すみれは片手に持ったグラスを一気に方向け、喉を潤す。
はぁ〜〜仕事を成し遂げた後のお酒は美味しいッ!
「ホントよ、もう!神田が食堂で六幻を振り回すんだからっ」
「ははっ。でもリナリーが止めてくれたから被害はなかったんだろう?」
「…ウン、ソウデスネー」
そう、お陰様で
食堂の被害はありませんでしたよ、リーバー班長。
リナリーがダークブーツを発動して神田を止めてくれたからね。
すみれはチラリとラビと神田達がいる方に目を向ける
「ほらほら、ユウも飲むさー!!」
「うっせぇな!テメェはただ騒ぎたいだけじゃねーか!」
あれだけ騒ぎを起こした張本人達は、もうすっかり仲良さげだ。科学班やファインダーの皆に囲まれ、既に宴の中心となっている。
それを見守るブックマンは「みんな若いのぅ」と呟いていた
「なあ、二人とも怪我してるけど。任務でもあったの?」
「「別に」」
ラビと神田の顔や腕にはガーゼや絆創膏が貼られており、どことなくボロボロだ。
「ふふ、二人はもう仲良しね」
「…ソウダネ、リナリー」
教訓、リナリーを怒らせてはいけない。
*
開催から数時間経つ。
どんちゃん騒ぎもピークを過ぎ、所々に眠りこけた仲間が転がっている。
すみれは周囲の会話から外れ、1人ほろ酔いをしていた。
(それにしても…)
同世代の子や、ジョニーやタップとはしゃぐラビの姿はどう見ても年相応だった。
ジョッキを片手に乾杯したり、飲み比べをしたり。大口を開けて笑ったり、無礼講で楽しんだり。今は輪から外れ1人り酒をしているようだ。
(…ディックの時とは、全然違うんだな)
だって、私と居るときはこんな風に笑わなかった。
こんな砕けた彼なんて、見たことがない。一転し、1人酒を嗜む彼もまた見たことがなかった。
歓迎会だけで、すみれの知らないラビの姿がいくつもあった。
「〜〜ッ!」
すみれは空いたグラスをその辺に置き、お酒が並々と注がれた中ジョッキを一気に喉に流し込む。
「…よしっ」
すみれは意を決し、空のジョッキを手放した。