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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離



引き止めるすみれの声が聞こえるも、ラビは振り返ることができなかった。


「なんで…っ」


何故、すみれの手を払い退けてしまったんだろう。
すみれの傷ついた顔が、ラビの脳裏を過る。


(…俺も何でっ、すみれから貰ったマフラーなんて着けちまったんさッ)


こうなる事なんて、簡単に予想できたはずだ。
すみれが気づくかもしれない事を失念するほど、このマフラーを着用する事は日常化していた。

「このジュクジュクの未熟者め」と、師であるブックマンの幻聴が聞こえてきそうだ。


(ーーーあの頃、このマフラーを貰った頃。俺はすみれが好きだった)


すみれから大切なモノを沢山貰った。
すみれと幸せな日々、ブックマンとしての決意ーーーーこのマフラーは今も大事にしている、唯一の品だ。


(そう、俺が大事にしていたのは“あの頃”のすみれとの日々であって…)


“今”の、すみれではない。

罪を償うために黒の教団に属した今のすみれの様子は、まんざらでもない。しかし、やっぱりココではない何処かで暮らしていて欲しかった。

そんな事を思う反面、再会できた嬉しさを持ち合わせる自分もいる。
月日が過ぎ2年経った今も、風化してくれない想いと相変わらず未熟な自分に嫌気が差す。


(ホント、俺って…昔も今も、格好がつかないさ)


マフラーに顔をうずめ、ギュッと握る。
そんな事を考えながら、食堂の出入口付近まで足を運ぶーーーーーー


















「ユー君」



「その呼び方辞めてクダサイ」

「諦めろ、神田。師匠はそうゆう人だ」

「帰ってきた時くらい甘えなさい、ユー君」

「てンめ…ッ」


「…何なんさ?」


先程の哀愁は何処へいってしまったのか。怒りオーラと穏やかオーラのぶつかり合いの気迫に呆気を取られ、ラビは思わず足を止める。

食堂の出入口ど真ん中で、今にも一発触発な空気を醸し出している(のは一人だけである)三人組がいる。
その内の一人がラビに気づき声をかけた。


「おや?君は数日前に入団した…」

「…………ラビっス、初メマシテ」

「ブックマンJrだね。私はフロア・ティエドールだ、よろしく」


フランス人の中年男性は、ポカンとしているラビに微笑んだ。

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