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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離



すみれは先程の渦巻く感情はすっかり抜け落ち、今は出来上がった団服の最終確認に精を出している。


「…………へぇ」


だから、ラビがどんな表情で、どんな目ですみれを見ていたのか。すみれはこれっぽっちも気づきもしなかった。
すみれは一通りラビの団服の確認を終え、ほっと一息つく。


「うんうん!大丈夫そうだねっ」

「サンキュー」

(それにしても…)


ラビは既に団服をお洒落に着こなしている。新調されたバンダナと団服に合うイヤリング、そしてモノトーン調に合わせた白いマフラーを身に着けていた。


「あ、マフラー解れてるとこあるよ」

「えっ、マジか!」

「直してあげる。ちょっと見せーーー」


よく見ると、このマフラーは年季が入ってそうだ。フリンジが元々付いていたであろう部分が見て取れる。

ーーーーそして、この網目や手触り。きっと手編みのマフラーだ。


(…あれ?)


この編み方、毛糸の継ぎ足し方、留め方はーーーー私のやり方と、似てる…?

というか、同じやり方だ。


(え、こんな事って、ある?)


こんな偶然、あるだろうか。
すみれは以前、黒の教団に訪れる前、ディックに手編みのマフラーをプレゼントしていた。
フリンジの付いた白いマフラーを。


(もしかして、私が編んだマフラーじゃ……?!)


あれから2年経つけど、ずっと使ってくれていたの?


フリンジも全て取れ所々解れ、年季が入り、決して綺麗とは言えなくなったボロボロのマフラーを。
今もこうして使ってくれている。

じんわりと目頭が熱くなる。
私に対するラビの考えが、気持ちがわからない。

拒絶されたかと思えば、助けてくれて。心配してくれたかと思えば、突き放される。

どうして、今もこのマフラーを使ってくれているの?



「ねえ、このマフラーって…」

「っ、使い勝手が、いいだけさッ」

笑顔だったラビはポーカーフェイスを崩し、マフラーに触れているすみれの手をパシッと強く払いのける。

「痛っ」

「あ、悪ィ…ッ!、ーーーっ!」

「ね、ねぇ!待って…!」


ラビはバツが悪そうな顔をするも、すぐにすみれから顔を背ける。
すみれが静止を求める声で足を一瞬止めるも、返事をせず食堂の出入口へ向かってしまった。

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