第14章 距離
ラビとリナリーが楽しそうに笑い合う。美男美女なため、その姿はとても絵になった。
そんな二人を割いて入る勇気の無いすみれは助けてもらったお礼も言えず、蚊帳の外にいるような気分で見つめていた。
「…(いいなあ、)」
ーーーーーリナリーは、いいなあ。
あんな風に笑い合って話が出来き、そして“ラビ”と彼の名を当たり前に呼ぶ事ができる。ふたりをみていたら、すみれの胸の奥が焦げ付くようにチリッと傷んだ。
(私が、リナリーみたいに可愛い女の子だったら)
私への態度も、扱いも、何か違っていただろうか。
こんな事を考えたって意味がないのに。
美少女のリナリーと自分を比べて、惨めになるだけなのに。
分かっているのに考えることを辞められず、モヤモヤとすみれの中で黒いモノがわだかまる。
(リナリーは美少女なだけじゃなくて、本当に良い子だ。なのに、私ってば…っ)
彼女に対して、嫉妬心と劣等感を抱いている。こんな事を思う自分が醜くて、あさましくてーーーきらい、
「なあ」
「!」
会話から外れていたすみれに、ラビが声をかける。
「え、なに?」
「この団服作ったの、ジョニーとすみれなんだろ」
「そ、そうだけど」
「すみれにも着たトコ、見せて来いって言われたもンで。ここにいるって聞いたんさ
どう?」
そう言い、ラビはくるりと身体をひねる。その姿はまるでモデルがポージングを取っているようだ。
ラビは人目を惹く華やかさがある。
「(わ、格好いい…じゃなくてっ)に、似合ってるよ!ちょっと確認させて?」
ラビと会話出来る嬉しさと、仕事関係じゃないと会話ができない寂しさを隠す。仕事モードに切り替え、ラビの団服のチェックをする。
「うんうん!サイズもピッタリみたいで良かった!」
ちょっと腕上げてみて?とラビにお願いし、すみれは生地の伸縮性を確認する。
「イノセンスの特性について聞いたよ」
「へ、もう知ってんの?」
「もちろん!そうじゃないと団服作れないよ」
「団服ってサイズが違うだけじゃねーの?」
「まさか!攻撃系で火を扱うって聞いたから、耐熱性の強い生地にしたんだよ
火から少しでも守られるようにね」