第14章 距離
動揺したすみれは体を大きく揺らしてしまい、脚立がグラグラ揺らつく。
やっ、ちょ、これ!
お、落ちっ!落ちるっーーーーー
「きゃっ すみれ!?」
リナリーの可愛い悲鳴が聞こえた。
なんで
なんで こうゆう時、落ちる瞬間がスローモーションに見えるんだろう。
天井に向って手を伸ばすも、脚立を掴むどころか触れることすらできず。床に落ちる時の痛みを覚悟する。
浮遊感に襲われるも、何故か人肌を感じる温かさに包まれた。そしてドサッと音を立ててすみれは落下した。
「痛っつー」
「え?」
直に床に叩きつけられたかと思えば、ほとんど痛みはない。ラビが下敷きになり、衝撃を和らげてくれたからだった。
「えっ、うそっ?!ご、ごめっ」
「怪我は?!大丈夫さっ…?!」
すみれが謝り退く前に、ラビが切羽詰まった様子ですみれの両肩をガシッと強く掴み、怪我がないか確認する。
その必死さから、自分を心配している様子が汲み取れた。
「どこも痛いトコねぇさ?!」
「う、うん」
「…良かったさ」
ラビは安心したようで、ハァーと溜め息を深く吐き出した。そんな彼の姿に、不謹慎だと思いつつすみれの心はじんわりと熱くなる。
「ラ…、そ、そっちこそ、大丈夫なの?!」
“ラビ”と呼ぼうとしたものの、避けられている事を思い出してしまい、躊躇ってしまった。
「俺はなんとも。つーか、受け止めきれなくて恥ズイ!」
「あ、ありが…」
すみれは慌てて退いた際、ラビの格好に気付く。目を見開き「あ、」と声を漏らす。
「すみれ!ラビ!大丈夫?!」
リナリーは二人のもとへ駆け寄る。
「う、うんっ」
「ダイジョーブさ」
リナリーも二人の様子にすぐ無事だったことがわかり、ホッと胸をなでおろす。
そして、彼女もラビの格好を見て「あ!」と、すみれと同じ反応を示す。
「団服、出来たんだね!似合ってるよ」
リナリーは手を合わせ嬉しそうに笑う。
そう、ラビは黒の教団の団服を着用していた。
「サンキュー!リナリーとお揃いさ〜♪」
「ふふっ。ラビはロングコートじゃないんだね!」
「そーみたい。コレ、結構デザイン凝ってんなぁ」