第14章 距離
ラビと再会したものの、すみれはラビとの距離感を掴めずにいる。
(今もそうだけど…笑ってくれたけど、怒ってる?)
再会後、あれから会話を交わしていない。二人きりで話す機会もなかったが、ラビになんだが避けられているような。私に対して怒っているような。確信はなかったが、そんな風に感じていた。
しかし、先程のラビの返答で確信した。ラビは私に距離をおいている。
知り合いだったのかと聞かれた時、ラビは肯定したけど、それ以上は踏み込ませないような空気を纏っていた。
(再会できて嬉しかったのは、私だけだったのかな…)
もう二度と会えないと思っていた。
この広い世界で、こんな偶然な再会をするなんて奇跡だと思う。だから本当に嬉しかった。
あれから元気にしていたのか。どんな国に行ったのか。何を見て、何を感じてきたのか。
あの頃のように“大好きだったディック”と、また沢山話しをしたかった。
あの頃の私達はーーーうまく言えないけど、特別な関係だったと思う。少なくとも、私にとって“ディック”は特別だった。
ううん、今も特別だ。
だから、ショックだったんだ。
すみれはラビに言われた事を思い出す。
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再会し、談話室でこれまでのすみれの経緯を話し終え、解散の頃合いになった。
『ディックっ!これからは黒の教団で、よろし…』
『ーーラビ』
『え?』
『俺の事は、“ラビ”って呼んで』
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(“ラビ”、かあ…)
“ディック”と呼ぶなと、釘を刺された気がする。
いや、拒否されたのかもしれない。
すみれは自分より前方を歩く赤髪の彼を見つめる。
(ほんと、2年で大きくなったなあ…)
姿は少し変われど、間違いなく大好きだった“ディック”だ。
二度と会えないと思っていたのに、こんな近くにいる。だけど、こんなにも遠い。
(2年ぶり、だもんな…)
2年あれば人間、見た目も中身も成長し変わっていくのなんて当たり前だ。特にラビなんてまだ未成年の、急成長している時期だ。
そっか
そうだよね
「変わってないのは、私だけかあ」
すみれはひとり呟いた。
小さなその声は誰の耳にも拾われることなく、科学班の賑やかな声や騒ぎに掻き消された。