第14章 距離
「(…っ)ちょっとな。ここに来る前に!」
ニコッと笑ってみせる。それ以上、すみれの他所他所しい態度を見たくなかった
“ブックマン”
すみれの口から発せられた言葉
きっと、すみれもブックマンについて話を聞いたはず
俺がブックマン後継者と聞いて、すみれはどう思ったのだろう
当時、俺が素性を明かさなかった理由に腹を立てただろうか
だからすみれは俺の扱いも、他の奴らと同様に接するのだろうか
「私的には!団服にこんなブーツがいいのっ!」
気まずい空気はどこへいったのやら、すみれは再び科学班の連中とお熱い議論をしている
「イノセンスの収納ホルダーはこんなのどうだ!?」
「いやいや、もっと機能性上げねーと!」
「でも折角だからデザインはさあ、」
「いいからテーブルに座るなジョニーーー!!!」
リーバー班長の怒号が響き渡るも、誰も気にしちゃいない。科学班の連中の、団服について熱く語っている目は…
「…目、キラキラしてない?」
当人のラビを置き去りにして、すみれと科学班はわちゃわちゃと盛り上がる。その様子は新しい玩具を手に入れて喜ぶ子どもの姿だ
「皆、仲間になったラビを守りたいんだよ。図ろ?」
リナリーはポンッとラビの肩を叩く。
(…仲間、か)
AKUMAとの大戦。今まで見た中で一番大きな戦。兵士になって記録に入ったのは初めてだ
「んじゃー、カッチョイーバンダナ作って♡」
「いいよ!」
「ジョニーそうゆうの得意だぞ!」
昼食を取り終え、皆で騒ぎながら科学班のラボへ向かう。ラビとジョニーが話をしていると、その間からひょっこりとすみれが顔を出した
「私も団服の制作してるの…いいかな、作っても」
少し不安そうに、ラビの顔を覗き込む。
俺の事を突き放したかと思えば、こうやって擦り寄ってくる。胸の中にモヤっとした苛立ちと、話しかけてくれる嬉しさが渦巻く
しかし、ここはポーカーフェイスで。いつもの笑顔でニコッと笑う
「…ヨロシク」
こいつらもーーーすみれも
いつか、歴史から除外されていくんだろうか
(エクソシストねぇ)
こんな風に歓迎されたって、いつかは此処を去る。すみれを置き去りにしたように。
(俺に希望寄せてもムダだぞー)