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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離



「あ、すみれ」


ラビがすみれを見つけ声を発するも、すみれはラビへ返事をしない。どうやら聞こえなかったらしい。

すみれ達科学班はジョニーを中心に、あーでもないこーでもないと頭が引っ付きそうな距離でトークを始めた。


「じゃあ団服はミドル丈にしてぇ〜」

「おっ、いいんじゃね!」

「団服にフードつける?」

「えぇ!?いらないよ〜!」


すみれは「フードは無し無しっ!」と全力で否定するも、楽しそうに議論していた。

今まですみれとは一対一でしか接したことがなかったため、すみれと俺との間に“他の奴ら”がいることに、とても違和感を感じる。


こんなに楽しそうなすみれは見たことがない。すみれにとって此処はーーー黒の教団は、悪い所ではないかもしれない。

不思議なことに、ドレスやダイヤを纏っていた貴族令嬢のすみれより、薄汚れた白衣を着たすみれの方が何倍もキラキラしている。


(でも、だからって、
“此処”じゃなくてもいいじゃんか)


戦争に関係のない、安全なとこで幸せになって欲しかった。
まだ団服について熱く議論しているすみれをチラリと盗み見る。


(…すみれのヤツ、目のクマ酷いさ)


よく見るとすっげぇ窶れてる。
それは多忙な仕事のせいか、または罪悪感に苛まれてか。


(…それに、呼ばないんだよなー

“ラビ”って)


もちろん、過去の名の“ディック”とも呼ばない。それがとても他人行儀に感じる。そんな事を考えてしまった為、再びすみれに対し苛立ちを覚える。


「そういや、ラビ達とすみれって、知り合いだったの?」

「へ?」

「え?」

タップの問いかけに、ラビとすみれは不意打ちを食らったような声が同時に漏れる。
周囲からは「俺も気になってたー!」と声が沸く。


「えーっと…」

俺は何て返事をすべきかと一瞬考えていたら、すみれが慌てて先に答えた。

「ぶ…ブックマンの事は、知らなかっよ!」

すみれは少し気まずそうに、苦笑いで即答する。
すみれは俺と親しかった事を隠したいのか。それともなかった事にしたいのか。


大好きだったすみれに、俺はなかった事にされてしまうのか。

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