第14章 距離
「そんなん!あの叔父達が勝手にやったことだろ…?!」
ラビは思わずガタッと音を立て席を立ち、声を荒げる。
「叔父様達が勝手にしたこととはいえ、私はその悪事の元で。人の屍の上で生きてしまった事に、変わりないよ。
私は人を殺し、AKUMAにした」
「違うさッ!!」
ダンッッと、ラビは両手をテーブルに強く叩きつける。
すみれはそんなラビに驚きも、身動き1つもしなかった。
「わかってるの。
私は悪くない事も、罪がない事も……本当はわかってる」
「それなら…っ!!」
「でも、許せない…自分が許せないの、」
「っ」
すみれは深く俯いているため、どんな表情をしているかわからなかった。
(ーーー俺は。間違ったことなんて、言ってない。
どうしてすみれは、自分ばかりを責めるんさ)
自分自身を大切にしないすみれに、ラビは腹を立てる。
いや、腹を立てていたのは。自分の思いがすみれに届かない事にだったかもしれない。
「だから、叔父様と叔母様が犯した事を、
ココでーーー黒の教団で、償う事を決めたの」
「そんなん、違うさッッ!!!」
悲痛な面持ちで否定するラビの声が、すみれと二人しかいない談話室に静かに木霊した。
「“無知は罪なり”…知らなかった、わからなかったというのは、罪」
「すみれは被害者さ、幸せに…!」
「なれないよ
私だけ幸せになんて、なれない」
やっと顔を上げたすみれは、まるで空を仰ぐように暗い天井を見上げた。そして、ゆっくりとラビに向かい、困ったような笑みを見せる。笑みで細まった瞳から、一筋の涙が落ちた。
すみれの頬を流れた涙は、流れ星のようで
笑顔は悲しみに溢れていたのに、何故かとても儚げで美しく、ラビは言葉を失ってしまった。
2人の手に持つマグカップはいつの間にか湯気は消え、コーヒーはすっかり冷めきっていた。
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あの日から、すみれと会話していない。
ラビはずっとすみれに対して苛立っていた。
何故、自分の事を大切にしないんだろう。そんな自己犠牲、美徳でも何でもないさーーーー
「…こんなことも、あるのだな」
再び巡り合うとは、とポツリとブックマンが呟いた。