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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離


「そんなん!あの叔父達が勝手にやったことだろ…?!」


ラビは思わずガタッと音を立て席を立ち、声を荒げる。

「叔父様達が勝手にしたこととはいえ、私はその悪事の元で。人の屍の上で生きてしまった事に、変わりないよ。

私は人を殺し、AKUMAにした」

「違うさッ!!」

ダンッッと、ラビは両手をテーブルに強く叩きつける。
すみれはそんなラビに驚きも、身動き1つもしなかった。


「わかってるの。

私は悪くない事も、罪がない事も……本当はわかってる」

「それなら…っ!!」

「でも、許せない…自分が許せないの、」

「っ」


すみれは深く俯いているため、どんな表情をしているかわからなかった。


(ーーー俺は。間違ったことなんて、言ってない。

どうしてすみれは、自分ばかりを責めるんさ)


自分自身を大切にしないすみれに、ラビは腹を立てる。
いや、腹を立てていたのは。自分の思いがすみれに届かない事にだったかもしれない。


「だから、叔父様と叔母様が犯した事を、

ココでーーー黒の教団で、償う事を決めたの」

「そんなん、違うさッッ!!!」


悲痛な面持ちで否定するラビの声が、すみれと二人しかいない談話室に静かに木霊した。


「“無知は罪なり”…知らなかった、わからなかったというのは、罪」

「すみれは被害者さ、幸せに…!」

「なれないよ



私だけ幸せになんて、なれない」


やっと顔を上げたすみれは、まるで空を仰ぐように暗い天井を見上げた。そして、ゆっくりとラビに向かい、困ったような笑みを見せる。笑みで細まった瞳から、一筋の涙が落ちた。

すみれの頬を流れた涙は、流れ星のようで

笑顔は悲しみに溢れていたのに、何故かとても儚げで美しく、ラビは言葉を失ってしまった。



2人の手に持つマグカップはいつの間にか湯気は消え、コーヒーはすっかり冷めきっていた。


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あの日から、すみれと会話していない。
ラビはずっとすみれに対して苛立っていた。

何故、自分の事を大切にしないんだろう。そんな自己犠牲、美徳でも何でもないさーーーー


「…こんなことも、あるのだな」

再び巡り合うとは、とポツリとブックマンが呟いた。
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