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49番目のあなた【D.Gray-man】

第14章  距離


自分の目の前にすみれがいることが、夢ではないかとラビは思う。このコーヒーの湯気のように儚く消え、覚めてしまうのではないか、と。

あの時ーーすみれと今生の別れを覚悟した時、蓋をした感情が今になって溢れ出す


(ーーーあぁ、これは)

嬉しさ、切なさ、悔しさ  恋しさ


セピア色に枯れた花が、水を得て命を息吹かえしたように。感情が色鮮やかに咲き乱れ、すみれを直視出来なくなった


「…よかったさ」

「え?」

「生きててくれて、本当によかった…っ」


ラビは頭を垂れているため、すみれに彼がどんな表情をしているか見えない。しかし、声音は僅かに震え、心底安諸した様子がひしひしと伝わる。


「っ、…私ね、」


すみれはあえて明るい声のトーンで話し出す。
ラビが心配してくれた嬉しさと、そんな思いをさせてしまった罪悪感で、胸が押し潰されてしまいそうだった。


「黒の教団に、保護されたの」

「…えっ?」

「あのあと…ディックと別れた後、すぐに」


「だから、大丈夫だったよ」とすみれは何事もなかったように明るく話す。
しかし、ラビの表情は一転し暗雲が立ち込めた。


「保護?」

「…まあ、正しく言えば。ブローカーの疑いがかけられて、保護されたんだ」

「な"…!」

「あっ!でも!大丈夫、酷い事なんてされてないよっ!疑いはすぐ晴れたしね!」


すみれは自身の顔の前で両手をぶんぶんと振り否定する。ラビの不穏な空気を察知し、慌てて補足した。


「…AKUMAとか、千年伯爵とか。どんな存在なのか、あのあと初めて知ったよ」

「そんなん、普通の人は知らないさ」

「ははっ…やっぱり、あの時からディックは知ってたんだね。


叔父様と叔母様は、ブローカーだった」


先ほどとは打って変わり、すみれは淡々と話し出す。
当時、すみれが暮らしていた街で、上流階級の貴族や富裕層ばかりの不審死が多発していた。黒の教団のファインダーがAKUMAやイノセンスの関与を探索していたところ、すみれの屋敷に目星を着けたそうだ。


「ファインダーが叔父様や叔母様の調査をしてたところ…。二人の悪事をキッカケに、あの屋敷を中心に、戦争が起きた。」

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