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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで



「だから、いいんだ」

「ん?」

「例え、頑張った事で偉業を残せなくっても。歴史に名を残せなくっても…

ーーー大切な人がいる、そんな幸せな人生なら。」


なぁんてね!と、すみれは自分の発言が恥ずかしくなり、照れ隠しで笑って見せる。

バカな俺はすみれの意味有りげな遠くを見つめる横顔にも、言葉の真意にも気づかなかった。
照れ隠しをするすみれに“やっぱり可愛いさ”と思うだけだった。



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どうして、今になってこんな会話ばかり思い出すのだろう。


「はぁっ、は…ッ!すみれ、大丈夫か?!」

「はあッ…うん…っ」

「もうちょいで、外だから…ッ!」


俺はすみれの手を引きながら、必死に走る。こんな切羽詰まった状況にも関わらず思考は冷静なのか、走馬灯のようにすみれとの思い出が頭の中を駆け巡る。


ガラガラガラガラーッ


「…きゃっ?!」

「っ!、危ねェッ」

グイッ

建物が崩落し、すみれに襲いかかる。
俺は咄嗟にすみれの腕を掴み、崩落のない壁側へ引き寄せる。すみれに危害が及ばないよう、俺は自然と覆い被さっていた。


「…っぶねー、」

「ディック!!血が…っ」

「あ?こんなん、大したことないさ」

さっきの崩落物が顔に掠り、頬をほんの少し切ってしまっていたようだった。

「…だ、よ…」

「?」

「私なんかのせいでっ、ディックが怪我するなんて…嫌だよ…っ」

「…ッ、そんなことッ!今は、走るさ!」

俺は再びすみれの手を取り走り出す。



(“私なんかのせい”なんて、言うな…ッ)

すみれの苦しそうな顔が、俺の脳裏に焼き付いてしまいそうだ。
俺の知ってるすみれは、そんなんじゃない。


(すみれには、笑っていてほしい…ッ)

俺はずっとずっと、人間に失望していた。
戦争ばかり繰り返す種族と俺は違うと思っていた故に、孤独だった。

夜になると孤独がより深くなり、部屋でうずくまる日もあった。シーツに顔をあて叫ぶも、言葉にならないもどかしさに襲われた。


だから、ブックマンとして生きようと強く思ったし、不要なモノは迷わず何もかも捨ててきた。
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