第13章 現在に至るまで
「あ、最近ね。素敵だなって思うことがあったの!」
「お!なになに?」
すみれのひと声で、俺は思考から会話へ意識を戻す
「この間のお茶会でね、ご高齢の貴婦人と会ったんだけど!
旦那様はもちろん、子ども夫婦や孫と仲良くて!『いつ死んでもいいくらい幸せ』って言ってて…本当に、すごく幸せそうだなあって!!」
すみれは目を輝かせながら、その貴婦人の話をするも…
「……で?」
「で?、って?」
「いや、だから今話してた夢と関係あんのかな、と」
「えぇ?!あるよ!!」
(いやいや、すみれの意図が全然読めねえさ!)
「だからっ!人間の幸せって、そうゆうトコにあるのかなあって思ったの!」
「えーと。つまりは結婚とか、玉の輿ってことさ?笑」
「またそうゆうこと言う!…でも、そうかもね」
ふざけて言ってみたことに対し、すみれはすんなりと納得する。「でも玉の輿は違う!」と即座に否定した。その反応に俺は拍子抜けした
「えっ、前は結婚が全てじゃないって、言ってたじゃんか」
「もちろん、そうだよ!」
(…すみれの言わんとしてる事が、全然わかんねぇさ)
俺が密かに頭を悩ませていると、すみれが話し出す。
「自分の人生を振り返った時に、大切な人がいることって、幸せな事だなあって思ったの。」
「…へえ」
俺は黙ってすみれの話に耳を傾ける。
「ちょっとね、想像しちゃったの。
自分が死ぬときに、子どもがいて、孫がいて。泣いて看取ってもらえる人生だったら、素敵じゃない?」
「…うーん、なんつーか。先のこと過ぎて、イマイチ想像できないさ」
「えー」
「やっぱ“夢”って言ったら、やりたい事を叶えるとか、偉業や名を歴史に残すとかじゃねーの?」
「うーん、そうかぁ…じゃあ、私の夢はー」
「うんうん」
「今、勉強している事が誰かの役に立って…大切な人が沢山いるようになる事、かな!!」
「何さそれ!曖昧すぎじゃね?笑」
「いいんですぅ〜!やりたい事もやって、幸せだなあって思える人生にするのが、私の夢なの!」
「へいへい。ある意味すみれらしいさ〜」
「もう!適当な返事ばかりしてー!」
すみれは怒ってみせるものの、ちっとも怒っていない。そんなやり取りがとても心地好かった。