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49番目のあなた【D.Gray-man】

第13章  現在に至るまで


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何故、今になってそんな事を思い出したのか。


「はぁっ、ハ…ッ」

息が上がる。
しかし、この息の上がりは走っているせいだけではない。


(今更、後悔したって…!)

そもそも、何に後悔するんさ。
ブックマンとして、仕事をしていたこと?
すみれに出会ってしまったこと?

すみれを、好きにってしまったこと?


「…ッ」

ブックマンになることが、嫌になった訳じゃない。すみれに出会わなければ良かったと、思っている訳でもない。

だけど、この気持ちの答えを、はっきりカタチに変えてしまうのが怖くて仕方ない。


(俺って、ほんと…ッ)

情けねぇさ




「…ぅおっ?!すみれ?!!」

突然すみれの足が止まる。
そのため、俺の足も強制的に止まらざるを得なくなってしまった。

「どうした?!もう少しで屋敷の外だから…ッ」

崩壊しかけている屋敷内にいるのは危険すぎる。一刻も早く外へ出る必要がある。

「…かな、…」

「え?」

「私…ッ、生きて、いいのかな…っ」

「すみれ…っ」


すみれは苦しそうに胸を抑え、肩を激しく上下させ呼吸をしている。
全力疾走させたせいもあるが、すみれのその苦しさは、そのせいだけではなくて。


「わ、たし…私は…ッ!」

すみれの瞳から、再び涙が落ちる。
繋いでいるすみれの指先は冷たくて、寒いわけないのに身体はカタカタと震えている。

すみれが言わんとしてる事が、手に取るようにわかる。


両親を殺した相手と、生きていた事。
間接的に叔父達の悪事に加担していた事。

今まで何も知らずに、過ごしてきてしまった事。


それ以上に様々な責任を感じている事が、繋いだ手から伝わってくる。
すみれは言葉を紡ごうとしても、紡げないでいるその姿が痛々しくていたたまれない。どうしてすみれが、


「当たり前、だろ…ッ」


生きていいのか、なんて。
自責の念に苛まれなければいけないのか。


「今はっ!ここを出ることだけを、考えるさ……走れッ!!」


俺はすみれの手を強く握り直し、再び走り出す。
ふと、ある日のすみれとの会話を思い出した。
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