第13章 現在に至るまで
(こんなにも、悔しいのにッ…)
言葉が出てこない。身体が動かない
そんな自分に悔しくて、情けない
「すみれを介して得た相続金も、底を尽きた。結婚させて結納金でも頂いて、お前の嫁ぎ先からAKUMAの取引を増やそうと思ったが…」
カチャ
叔父は降ろしていた銃先を、今度はすみれに定める。
「もう用無しだ。“冥土の土産話”もくれてやったんだ。ーーーここで、死ね」
「やめろッ!!」
ディックがすみれの前に飛び出し庇う。
どこから出したのか、ディックは短剣を握り気づけば叔父との間合いを詰めていた。
カキンッ
ーーーーーーーカシャン
ディックが短剣の柄で、叔父の手から一瞬で銃を払う。そして銃は、すみれの手元にカシャンッと音を立てて落ちた。
「痛ッ…!小僧、何をするッ!」
「それはこっちのセリフさ」
二人の押し問答と叔母の声が、すみれには遠く感じる。すみれは手元に落ちてきた銃を見つめる。
(叔父様と叔母様に、感謝しろ…?)
私から大切な両親を奪ったのは、あなた達でしょう?
(っ、ふざけ、ないで…!)
憎い
叔父と叔母が憎くて、仕方ない
(返してよ…!)
お父さんとお母さんを 返して!!
「…して…る」
「すみれ?」
ふらりと立ち上がるすみれに、ディックは声をかける。すみれはぶるぶると震える手で銃を拾う。
そしてディックの背後にいる、叔父と叔母に狙いを定めた。
「おい、すみれ…!」
ディックの焦る声と、叔父と叔母の「なっ…!?」「ひぃっ…!」と短い悲鳴の声がした。
「そんなもん、持つなさっ!!」
ディックの焦る声が。
銃を手放せと、発泡するなと、言っていることがわかるくらい、私は冷静だ。
「…して、やるっ」
それでも、止められない
両親を失ったこの悲しみと
「…殺して、やる…ッ!」
両親を殺された憎しみは、止められない
「すみれっ!!」
「…殺してやる!」
「やめるさ!」
ディックは銃を構えるすみれの前に立ちはだかった。